平成22年度 鹿児島大学FD報告書
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(2)大学における学生参加とSD 大場淳広島大学准教授の基調講演では、主としてヨーロッパ諸国の大学における、とくに学生参加型の事例が紹介された。先進のヨーロッパ諸国においても、大学運営への学生参加にはまだまだ問題が多く残っているが、一方、日本の大学では昭和40年代の学生紛争以降、多くの大学で大学運営への学生参加を排除した。そのため、今日、「教員中心の大学」から「学生中心の大学」へ、視点を大きく転換することが求められている。 大学と学生の関係を変える可能性のある学生参加としては、学生に対する教育・指導に学生自身を活用することが平成12年の廣中報告に述べられている。一方、ヨーロッパで認められている学生参加の意義の多くは日本でも適用できることから、日本に適応した在り方を考えることが大切である。学生の学習達成度は大学の種類、教育プログラムや教授形態等の条件・設備面よりは、学生が学生時代をどのように過ごしたかによって決定される(タイヒラー『ヨーロッパの高等教育改革』)ことから、学びの環境改善への学生参加が有効であり、参加を促す学生支援にはSDが役割を担うとの提言があった。 日本における先行事例として、岡山大学学生・教職員教育改善委員会と山形大学等・FD学生モニター制度/大学生FD会議の例が示された。 最後に、学生参加とSDについて、大学運営への学生の意見の反映、質保証活動への学生参画の推進、学生との協働の展開などが提案された。4.パネルディスカッション 「連携大学等におけるFD・SD活動への取組み」をテーマに、鹿児島大学、志學館大学と九州大学から事例報告が行われた。(1)学生と創るFD活動の事例 鹿児島大学教育学部の深川和良講師から、教育学部の教育改善委員会による取り組みが報告された。教育学部各専修から3年生1名以上が学生実行委員会に参加し、平成22年度には19名で活動したこと、週1回の委員会、シンポジウム・プレ企画開催(7月、スポーツ大会)、アンケート調査(11月)、シンポジウム開催(1月~2月)を企画・運営している。平成21年度からは、立命館大学で行われる1泊2日の学生FDサミットにも参加している。(2)志學館大学のFD取組事例「志學館大学のFD活動の将来」 志學館大学の近藤諭准教授から、志學館大学におけるFD活動の現状と今後の展望について説明が行われた。(3)Q-LinksのSD取組事例 九州大学教育改革企画支援室の田中岳准教授から、九州地域大学教育改善FD・SDネットワーク:Kyushu Learning Improvement Network for Staff Members in Higher Education(Q-Links)の目的や活動内容について説明が行われた。5.おわりに 4時間という比較的短い時間内に、2つの基調講演と3つの事例報告が行われた。基調講演では、鹿児島大学における今後の方向性について、強い示唆を得ることができた。また事例報告においては、個々の取り組みの特徴が示され、相互に情報交換を進めてFD・SD活動がより有効に刺激を与え合うことの重要性が明らかとなった。 今後は、本フォーラムで得られた内容を実践に結び付けられるように、そして教職員が相互に新しい価値観を共有できるように、FD・SD活動に取り組んでいきたいと思う。 会場の様子パネルディスカッション9

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