平成23年度 鹿児島大学 FD報告書
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 今回のパネルデイスカッションは2件の事例報告の後、コメンテーターから事例報告に関するコメントがあり、その後フロアとの質疑応答が行われた。 まず1件目の事例報告は鹿児島国際大学の大久保幸夫先生から「『自分の言葉で表現できる』学生の育成」と題する文部科学省の「大学生の就業力育成支援事業採択」プロジェクトに関するものであった。本プロジェクトは、就職面接などで自己の主体的な意見構築ができない最近の学生の一般的傾向という現状を全体的な背景として踏まえている。そしてその上で企業や地域でのフィールドワーク、国内外でのインターンシップ等での学生の主体的で積極的な経験を通じて、「聴く力」、「話す力」、「考える力」などの就業力を育成するということが眼目とされている。さらに、Webキャリア・ポートフォリオ(WCP)の活用によって学生がPDCAサイクルを実践できる仕組みも構築されているのが本プロジェクトの特徴である。このWCPの記録を教職員が共有することで学生に対する有効なサポートを提供し、学生の気づきを促すことで、学生の自己実現型のキャリア形成を目指すというものである。 2件目は、本学法文学部の竹内勝徳先生から、同学部人文学科の実践例として「取材学習を取り入れた循環型初年次教育」と題する事例報告がなされた。これは文部科学省大学教育推進プログラム採択事業となっているものである。本プロジェクトは、従来型の座学中心の文系教育に新機軸を打ち出すべく、現代社会が要求する実践力と問題解決能力の育成を目指して実施しているものである。本プロジェクトでは、人との交わりのなかで、「見る、聞く、読むなどの感じる力」、「調べ、考える力」、「書き示す力」を初年次学生が習得すべき力としてとらえ、企業との連携等を通じて多メデイアを駆使した現場実習の取材学習を導入している点が特色となっている。また、いわゆる先輩、後輩という伝統的なたてのつながりのなかで、授業には先輩をStudent Assistant(SA)として起用するが、その授業を受けた学生を1~2年の講習の後SAとして再び初年次教育に参加させるという循環型の人材育成を実施することで、初学年から高学年までの教育の連携性・系統性を実現しようとしている点も本プロジェクトの特徴として挙げることができる。 上記2件の事例報告の後、コメンテーターの愛媛大学の秦敬治先生からのコメントがあり、本日の基調講演、事例報告に共通する要素としては、現代社会のニーズに応えるべく、いずれも学生が能動的に自己表現する力の育成に重点が置かれていることが挙げられる、というご指摘があった。またフロアからの質疑の中で、今回紹介された事例の、学生と教職員の密度の高いかかわりあいを実践する教育体制の中で、やはり、学生の状況を教職員がどの程度しっかり把握して有効適切なフィードバックにつなげていくかが、このようなプロジェクトを成功させる上で重要なポイントであろうという意見が出された。 総体的に、今回のパネルデイスカッションは教育の現場を学内に限らず広く実社会との接点形成を積極的に構築することで、より活性化された学生と教職員の新たな連携を生み、それが結果として学生の豊かな自己発信能力の形成につながるという、新たな実践型教育の方向性が説得力を持って示されたところに大きな意義があったように思われる。(文責 教育センター 富岡龍明)FD・SD合同フォーラムパネルディスカッションの概要と総括11

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