平成24年度 FD報告書
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9取ることと結果の全面公開については多くの懸念や否定的反応が存在したが、「学生の評価を安易に授業そのものの質と見做すことはしない。教員同士の比較競争の材料にしない。教員の教育業績評価に結びつけない。」というような配慮をすることによって困難を克服してきた。 3学科7専攻で統一した形式の授業アンケートを導入しようした際に先行していた商経学科の方式には強い拒絶反応があった。「アンケート結果は当該授業担当教員のみに通知」する方式から始め、公開する範囲を段階的に広げてきた。全学への配布に至るまでに10年かかった。今後はアンケートの実質化が課題である。2012年度後期から「中間アンケート」を実施し、当該学期内にアンケートに基づく授業改善を行うことを試みている。⑵:「医学科におけるアウトカム基盤型教育実現への取り組み」(要旨)報告者:田川 まさみ(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科教授) 「アウトカム基盤型教育」とは学習成果として期待される能力を到達すべき目標とし、達成のための教育を実施し、到達目標に照らして学習効果を評価する形式の教育システムである。医学部医学科ではアウトカム基盤型教育を導入して3年目を迎えている。導入にあたって、新カリキュラムを構築し円滑に実施していくために、講習を含むワークショップを開催して教員の意識向上を図ってきた。 当学科では入学から卒業までをPhase 1(医学・医療の基盤)、Phase 2(総合的学習)、Phase 3(臨床実習)に区分し、Phase2終了時とPhase3終了時にそれぞれ2種類の全国規模の資格試験を受験する。これらをとおして学生に医師となるために必要な資質(基本的臨床能力、医学知識、倫理観と社会的役割の認識、科学的思考能力)を習得してもらうことが到達目標である。入口側の改善として、アドミッションポリシーを整理し、それに基づいて入学者選抜方法を改定した。現時点で受験生数は増加傾向にある。 授業評価については、医学科は学期制ではなくて2、3週間で一つの授業が完了し、すぐに次の授業が始まる。授業アンケートは逐次行う必要がある。アンケートの結果を教員にフィードバックすることにより、徐々にではあるが評価が高くなってきている。 医学系のカリキュラムには全国的に臨床実習の改善が求められおり、そのために次のような取り組みを行っている。●PBLチュートリアル学習(problem-based learning 問題基盤型学習)  以前から少人数による問題基盤型学習を行ってきたが、グループ学習を指導できるチューターの人数を増やし、技能を向上させる必要があった。チューター養成講習会を5回開催し、のべ85人が受講した。●シャドウイング(医療現場の見学)  学生の臨床経験を増やしたくても学内では手一杯の状況である。そこで、学外の医療機関の協力を得て、医療が行われている現場で学生が施術者のそばに寄り添って見学する形式の授業を導入した。●臨床実習の指導者養成講習  臨床実習を改善するには、指導者の意識・技能を向上させる必要があり、そのための講習会や説明会を複数回実施した。

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