平成25年度 鹿児島大学 FD報告書
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9しかし、発達障害に関しては他の障害と異なり次のような特有の問題がある。●医学的診断のある学生は少なく、それを条件にすると支援のタイミングを逃してしまう。●自己理解が進んでいない場合、学生が主体的かつ適切に自らの修学に関する配慮要請を行うことが難しい。 →発達障害学生が自身に必要な配慮を理解していく過程をサポートする必要がある。●困難さに個人差が大きく、必要な配慮も異なり定型化ができない上、状況によっても必要な配慮が異なる。 →本人と支援者(教職員)の双方が納得できる配慮を、試行錯誤を重ねながら探求する必要がある。 富山大学では、障害のある学生の支援担当部署として、アクセシビリティ・コミュニケーション支援室(HACS)を学生生活支援センター内に設置し、ここで、発達障害学生の支援も行っている。(保健管理センターに置かなかったのは、学生が相談に来やすいようにとの配慮からである。) 発達障害学生支援の特長は次の3点である。(1)トータルコミュニケーションサポート1)診断の非重視  支援対象者を「高機能発達不均等」学生と定義し、医学的診断の有無にかかわらず、対人関係やコミュニケーションにかかわる困りごとを支援の出発点とする。2)マルチアクセスの確保  学生が容易にアクセスできるよう複数の支援チャンネルを用意3)メタサポート  HACSは学生をサポートしようとする教職員や保護者をサポート4)シームレス・サポート  入学前・入学直後から卒業後の就職定着まで支援(オープンキャンパスでの相談窓口設置、大学生活の体験プログラム実施等)(2)支援を通じた合理的配慮の探求モデル 次のサイクルをまわしながら、「とりあえずの支援方策」から「支援目標の漸進的改善」を図っている。 ●ナラティブ・アセスメント  本人が困っていること、本人の努力がなぜ報われないかを聞き取り、本人の視点から物語化     ↓ ●コーディネーション  本人(学生)と支援者(教職)の視点をつなぎ、双方が納得できる配慮を探る。     ↓ ●合理的配慮づくりと評価(3)チーム・サポート1)情報共有の範囲を一律に設定せず、柔軟に設定・変更(本人・保護者合意のもと)2)集団守秘義務の考え方を適用3)合理的配慮は、前もって定めることにこだわらず、本人も含めたサポートチームが合意形成を図りながら探求(文責:法文学部 柿内 一樹)・・・

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