平成25年度 鹿児島大学 FD報告書
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103.パネルディスカッションの概要と総括 今回のパネルディスカッションは、「発達障害学生への授業支援を考える」というタイトルで、3件のパネリストからの事例報告の後、コーディネーター及びコメンテーターの先生からパネリストへの質問・コメントがなされ、その後フロアとの質疑応答が行われた。 まず1件目の事例報告は鹿児島大学保健管理センター長の伊地知信二氏から、「鹿児島大学における発達障害学生支援」についての報告がなされた。鹿児島大学の保健管理センターにおける学生支援の現状についての報告であり、平成21年度以降支援件数が急激に増加している現状や、全国における発達障害学生支援の現状の件数との比較においてほぼ10倍である現状が説明された。また、具体的な取組について多数の写真を示しながら、相談状況、イベント等を通しての居場所の提供、留学生との学生交流の状況、ソーシャルワーカーによる個別の自宅訪問、個別学習環境の提供、履修申請の補助、卒業論文発表のサポート、就職面接のサポート、などの多角的な取組について紹介を行った。まとめとして、皆が同じ場で共に学ぶという方向性で、包括的に支援を行う必要性が示された。 2件目は、志學館大学参与の有川宣明氏から「発達障害学生の授業支援̶志學館大学の取組」と題する報告がなされた。修学アドバイザーという立場からの経験を踏まえ、志學館大学の学生支援センターの成立の経緯や役割の変遷、現在の組織体制について説明がなされた。具体的な取組として、発達障害学生の把握、支援ニーズの確認、支援計画の作成と周囲への配慮の要請、支援計画の評価と修正、というステップごとに具体的に取組が説明された。 3件目は、鹿児島大学教育学部准教授の片岡美華氏から「個への授業支援とユニバーサルデザイン」というタイトルの報告がなされた。ここでは、障害学生に対して、具体的な授業支援について、教員がどのように対処して行くことができるかについて、卒業論文・ゼミ活動、教育実習という場面における例も示しつつ説明がなされた。次に、学習面、生活面、環境面という全体の環境を整えることで支援を行うユニバーサルデザインが必要である、という解説がなされた。ユニバーサルデザインとは、調整又は特別な設計を必要とする事なく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計を意味している。この概念の教育への導入の有効性が、学習環境の整備や授業の工夫についての具体的な事例を含めつつ解説された。 上記3件の報告の後、大学地域コンソーシアム鹿児島FD・SD活動事業部会長である鹿児島大学教育学部教授の有倉巳幸氏をコーディネーター、基調講演を担当された富山大学学生支援センター・アクセシビリティー・コミュニケーション支援室長の西村優紀美氏をコメンテーターとして、ディスカッションが行われた。 まず有倉氏から、本日の3名のパネリストの報告事例における論点の整理がなされた。その上で、特に個々の学生への支援から全学レベルでの支援への必要性が提示され、パネリストに対してどのように対処して行くべきかの質問がなされた。伊地知氏からは、コーディネーターを含めた全学としての組織体制の整備の必要性について言及された。有川氏からは、教職員からの発達障害学生の“気づき”の連絡体制整備の有効性が示された。片岡氏からは、発達障害が多様である事を考慮すると、支援する側もスタッフのグループとして多様な体制で取り組んで行く必要性が示された。 また、議論の中で、学生自身が自己をメタ的に把握して客観的に向き合う必要性についても話題にあがった。それは障害がある学生のみならず全ての学生に必要であろうという意見も出された。 その後フロアからの質問がなされた。サポートが必要な学生に対して、入学時に支援が必要な学生についてどのような把握が行われているかについて質問がなされた。これについては、伊地知氏および有川氏からUPI、CMIというスクリーニングテストの実施状況等について解説がなされた。また、障害に自覚が無く、周囲も気づくことが鹿児島大学FD報告書

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