鹿児島大学FD報告書(平成26年度)
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鹿児島大学FD報告書12②PBLの実践事例  今回は、PBLについて4つの科目での実践が紹介された。共通教育科目である「4つの力スタートアップセミナー」「PBLセミナー」と、専門教育科目である「教育心理学」「教育実地研究」である。以下では特に、「4つの力スタートアップセミナー」「PBLセミナー」の要旨について述べる。(1)4つの力スタートアップセミナー  三重大学では、2005年の法人化を受けた第1期中期計画・中期目標においてPBLを通して「4つの力」を育成する方針が定められた。4つの力とは「生きる力」「考える力」「感じる力」「コミュニケーション力」である。  これを受けて2008年度より初年次教育科目「4つの力スタートアップセミナー」が開講された。この科目は、4つの力がどう役立つかを理解しつつ修得することを目指すと同時に、PBLを通して学ぶことによってPBLそのものについても学ぶことを意図している。授業を担当している特任教員は毎回授業案を作成・共有しているほか、各クラスの情報共有や改善方針の検討のために毎週ミーティングを実施している。また、共通テキストやルーブリックの使用などにより、全体の統一を図っている。(2)PBLセミナー  この科目は、ガイドラインに沿って各教員が授業をデザインし、予備審査を通過した場合のみ開講できるものである。ガイドラインでは、自主的・能動的・自己決定的学習を受講生に求めること、グループワークを取り入れること、学期末に公開発表会を行うことなどが定められている。「PBLタイム」「自習時間」のセットで1つの授業であり、学生には教師に教えてもらうだけでなく、自ら学ぶことが期待されている。  中西氏の授業では、「学ぶこころの法則発見」というテーマのもと、グループごとに決めた課題について授業時間内に練習し、その過程を通じて学びの法則を発見・検討するという実践が行われている。実践後の調査結果からは、文献講読や数学的な問題解決についてPBLではより積極的に学習行動が行われていること、特に、複数の文献・資料の内容をまとめる活動が積極的に行われていることが明らかにされた。③まとめ  アクティブ・ラーニングというとグループ・ディスカッションやプレゼンテーション等の活動がイメージされやすいが、講義中心型授業でもアクティブな学びは可能である。それでも、PBLでしか見られない学びの姿も確実にあるものと思われる。大学教育の中にはいくらかそうした活動が含まれていることが望ましいのではないか。  今後は、異なる学習者の特性・能力にどのように対応するかを考えつつ、その一方で、全ての学習者により良い学びを実現できる場の提供が求められる。授業者は、場の準備はできても、最終的に学ぶかどうかを決めるのは学生自身である。学生が自ら学ぼうとするような場の構築や課題の提供をどのように行っていくかが大きな課題である。

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