鹿児島大学FD報告書(平成26年度)
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 本学は、大学教育の改善を目指して、ファカルティ・ディベロップメント(以下、FD)を推進していくことを学内外に明らかにするために、「鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針」を作成し、平成26年7月17日の教育研究評議会にて決定した。 本指針では前文で、鹿児島大学が大学憲章の下に、自主自律と進取の精神を持った有為な人材育成を目的とし、その目的に根ざした人間を育成することができる教育を実施する責務を負っていることを明らかにした。その上で、FDを大学全体として推進していくための必要事項を定め、それぞれ大学の責務、部局等の責務、教員個人の責務を明確にした。 この大学教育を改善するアプローチとして、Diamond(2002)は、Faculty Development、Instructional Development、Organizational Developmentを挙げた。それぞれ順に、ファカルティメンバー個人に焦点を当てた個々の教授技術の改善(教員レベル)、教育活動に焦点を当てたコースやカリキュラムの改善(部局等レベル)、組織の構造や組織間の関係の改善(大学レベル)を意味する用語である。本指針では、この知見に基づいて、3つの階層に分け、FDの責務を明確にした。以下、条文に沿って概要を説明する。大学の責務 まず、大学レベルのFDであるが、IR(institutional research)を通して、大学の理念や教育目標と、大学で行われている教育の整合性を精査する。評価の結果、改善・改革の必要性があれば、各部局の環境整備や各教員のFDへの取組に対して支援を行うことと考えた。このレベルのFDを実現していくためには、次の3つに着眼していくことが求められよう。大学の理念や教育目標にそった指針の設定 大学独自の教育理念や教育目標に沿って学生を教育するためには、教職員は何を身につけていく必要があるのかを、大学は明確に示さなければならない。そうした大学レベルのFDにおける指針があってこそ、部局レベルおよび教職員レベルのFD活動が根拠を得て実施できる。教学IRの必要性 大学でFDが推進されるためには、教育目標に加え、現在行われている教育がどのような状況なのかを的確に把握する必要がある。そのためには、大学情報と学生調査、大学ベンチマークをもとに、定期的に比較検討しなければならない。本学では現在、大学IRコンソーシアムに加盟し、学生調査を行うことで、成果と課題の把握に努めている。組織開発(organizational development) 組織開発とは、組織が持つべき多様な強みや、組織が機能するために必要なプロセスや組織としての働きが、効果的に機能するように意図的につくりこんでいく作業のことを指す。大学の組織の骨組みをハード面とするならば、FDを進めていくためのソフト面が必要である。これは、人と人のコミュニケーションや協働、目標へのコミットメントの基礎となる組織への信頼感、組織としてのまとまりなどを指す。大学は、もともと様々な分野の専門家が集まっている組織であり、ある意味、現代の組織におけるキーワードでもある「ダイバーシティ(多様性)」が高い組織である。従って、大学は、こうした組織上の特性を踏まえ、まとまりや一体感、コミュニケーションなどのソフト面を積極的に構築する必要がある。大学レベルのFDでは、この組織開発に投資をしていくことが求められる。部局等の責務 次に、部局レベルのFDであるが、これは、各研究科、各学部・学科のFDであり、教育目標とアドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー(以下、3ポリシー)と整合性のあるカリキュラムを提供できているかを精査し、必要に応じて、カリキュラムの開発や改善に努め、教育の質の向上を図ることと考えた。このレベルのFDを実現していくためには、次の3つに着眼していくことが求められよう。鹿児島大学ファカルティ・ディベロップメントに関する指針の作成6鹿児島大学FD報告書

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