鹿児島大学FD報告書平成31年度
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113.話題提供講師:家島 明彦氏(大阪大学 キャリアセンター 副センター長・准教授) キャリア教育を専門とする家島氏からは、昨今のキャリア教育を巡る動向が紹介された。我が国では、平成11年の中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」においてはじめて「キャリア教育」という文言が公的に示された。この後、様々な施策が行われ、さらに平成23年には中央教育審議会が「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」を示すなど、キャリア教育は一貫して、初等・中等・高等教育という一連の学校教育課程における重要な課題として位置づけられている。これらは直接的に高等教育機関におけるキャリア教育に影響を及ぼすものではないものの、学生は入学までに様々なキャリア教育を受けてきたにもかかわらず今もなお悩み、自身のキャリアについて模索している場合が少なくないということは知っておく必要があるだろう。 その後、大阪大学での実践の紹介がなされた。家島氏が所属するキャリアセンターはまだ設置されて1年経たないうえに専任教員1名のみの極めて小規模なセンターであり、職員も他組織との兼務であることからその所掌範囲には限界がある。しかし、そうした中で、小規模だからこそ教職協働が進み、優先順位を付けた着実な取り組みが進められているともいえる。例えば、リクナビやマイナビといった業者による就職支援セミナーの実施は、便利かつ一定の有効性はあると思われるものの、必ずしも高等教育機関側の意図に沿うとは限らない側面もある。また、最近では個人情報保護に関する問題も明らかになっており、高等教育機関としてそうした業者との関係をどうするか、就職支援のための企画をどのように運営するかを再検討する必要性に迫られてもいる。大阪大学が行っている卒業生の採用を希望する企業との直接的な交渉を通じてセミナーを企画・運営する方式は、他大学にも適用し得るものだといえる。 個別の大学の取り組み以外に、大学間の連携についても紹介された。国内ではキャリア教育に業務として携わる教職員がそれぞれのノウハウや悩みを共有し合う企画が継続的に行われているとのことであった。今回の本企画もそのような意味を一定程度は持つものの、各高等教育機関においてキャリアセンターなどに所属する教職員だからこそ抱えがちな悩みや解決すべき課題についてともに考え、アイディアを出し合うことにより、それぞれの機関のキャリア教育が一層充実すると同時に、我が国のキャリア教育についても発展が期待できるといえるだろう。 さらに、キャリア教育については国を超えた交流も進んでいる。学生のキャリア形成をいかに支援するかという本企画のテーマは決して県内高等教育機関だけのものではなく、世界的に共通する課題でもある。文化や社会状況の違いを超えて学生のキャリア形成支援の在り方についてともに考えることにより、新たな知見が生み出されることだろう。

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