鹿児島大学FD報告書平成31年度
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26鹿大版FDガイド第18号、第19号の発刊にあたって~ベストティーチャーに聴く授業の工夫~1.はじめに 本年度のFDガイドでは、平成30年度より開始された新たな取り組みである「鹿児島大学ベストティーチャー賞」の最優秀賞受賞者である3名の先生方の授業運営に関する工夫や注意点等を紹介することとした。それぞれ専門分野だけでなく、担当授業の位置づけも共通教育、専門教育と異なり、対象となる受講生の学年も様々であった。しかし、このような相違を超え、共通して取り入れることができ、効果を発揮するコツもあるのではないかと思われる。実りある授業のあり方を共有することにより、本学の教育における一層の質的向上につながることを期待する。第18号は鄭 芝淑先生(共通教育センター)により、第19号は林 敬人先生(大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻 社会・行動医学講座 法医学分野)及び高谷哲也先生(学術研究院 法文教育学域 教育学系)にご執筆頂いた。2.第18号「ベストティーチャーに聴く授業の工夫①」 本号のイントロでは、学術研究院総合科学域総合教育学系 伊藤 奈賀子 准教授にお願いし、「鹿児島大学ベストティーチャー賞」について概説いただいた。選出の指標が主に授業運営に関する工夫や高い指導力による教育の成果等であることの他、各学部及び共通教育センターから選出された10名の中から、学長や教育担当理事・副学長をはじめとする選考委員会により、ベストティーチャー最優秀賞として最大3名が選出されることが説明された。  平成30年度にベストティーチャー最優秀賞として選出された鄭 芝淑先生には第18号で、林 敬人先生及び高谷哲也先生には第19号で受賞者の声としてご執筆いただいた。受賞者の声① 鄭 芝淑先生からは、コミュニケーション活動の重視 、人間関係の重視、楽しい学習、統一授業、授業外活動、究極の目標の6項目についてご執筆いただいた。3.第19号「ベストティーチャーに聴く授業の工夫」 本号では、第18号に引き続き、ベストティーチャー最優秀賞として選出された林 敬人先生及び高谷哲也先生にご執筆いただいた。 林 敬人先生からは、学生に飽きさせない授業 、導入部における工夫 -最初の10分間が肝心、中盤における工夫 -時には脱線することも肝心、終盤における工夫-最後まで気を抜かないについて興味深くご執筆いただくとともに、“最後に”として「講師自身が楽しそうに授業を行うこと 」との記載があった。 高谷哲也先生からは、「よい授業」に唯一の解はない、「教える」のではなく「自分たちでつかむ」学習をデザインしファシリテートする、自分が誰よりも授業とことばを大切にする、の3項目についてご執筆いただいた。 令和元年度のWGメンバーは、帆保 誠二(共同獣医学部)、米田 憲市(法文学部)、牧迫 飛雄馬(医学部)、 甲斐 敬美(工学部) であった。(文責:帆保誠二)FDガイド第18号FDガイド第19号鹿児島大学FD報告書鹿児島大学FD委員会FDガイドWG私は「学生に飽きさせない授業」を目指して,授業の導入部,中盤,終盤にそれぞれ以下のような工夫を凝らしています。授業の導入部では,最初の10分間に特にエネルギー投入し,「本日はどのような内容の授業が展開されるのか?是非聞いてみたい!」という学生の積極的な聴講態度を作り上げるように努力しています。そのための工夫として,最初の授業スライド(題名ページの次)は必ず,授業内容を象徴し,かつ学生が何らかのリアクションをとることができる質問を投げかけるものにしています。スライドを提示した後に考える時間を少し長め(5~10分間)に確保することで,学生の学習意欲を高めるとともに,教室の雰囲気を温めるようにしています。これによって,授業中でも学生が積極的に質問しやすい環境を作り上げ,自然と「双方向型対話型授業」につながっていると思います。「双方向型対話型授業」は,講師が学生に一方的に話し続ける「一方向型授業」と比較して,学生が主体的に講義に臨むことを可能にし,また,学生-教員間でコミュニケーションを図ることができるため,結果として学生は講義に飽きない上に,内容の理解が高まることにもつながっていると考えています。中盤には,授業に飽きて眠たくなる学生が少なからず出てきます。授業途中に学生を眠らせないための工夫としては,不定期に質問したり(指名方法はランダムに),図やパワーポイントのアニメーション機能や動画を使用し,視覚に訴えかけたりして学生に刺激を与えるようにしています。また,法医学に限らず医学部の授業は全体的に暗記事項が多いのですが,スライドに単に名称を提示するだけではなく,その背景にある基礎病態(解剖生理)も同時に提示することで,学生が理解を伴った形で記憶できるように心掛けています。さらに,カリキュラムに沿った内容以外にも,法医学領域の最新の知見を提供し,学生の学問的好奇心を刺激することで,授業後も自主的に学習する意欲を掻き立てることにつながると思います。時には授業以外の内容に脱線することも,講師にとって必要なスキルだと思います。終盤には,授業内容に関する問題を用意し,時間をとって考えさせた後に,数名に発表させます。その後,説明しながら答え合わせをすることで,授業内容の理解度を最終的に確認することもできます。また,授業後に予定されている法医解剖や死体検案の告知をすることで,見学を促し,授業後も自主的に法医学を学ぶ環境を提供しています。実際に見学に来た学生には,その日の授業で教えた内容を直に経験してもらうことで知識の定着にもつながると思います。授業の最初から最後まで学生が授業内容を理解するために,あらゆる工夫を凝らすことが大事であると思います。以上のような工夫を凝らしていますが,授業全体を通して,学生に楽しみながら,興味を持って受講してもらうことで最も教育効果が得られると考えています。そのために最も大事なことは,講師自身が楽しそうに授業を行うことであり,私自身は常に心掛けています。今後もベストティーチャー賞に恥じぬように,教育法について絶えまぬ努力と工夫を重ねて参りたいと思います。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科健康科学専攻 社会・行動医学講座 法医学分野教授 林 敬人1 学生飽きさせない授業2 導入部における工夫 -最初の10分間が肝心3 中盤における工夫 -時には脱線することも肝心4 終盤における工夫 -最後まで気を抜かない5 最後に15号12号13号14号16号17号18号19号20号11号FDガイド第19号【発行/2020年○月】ベストティーチャーに聴く授業の工夫鹿児島大学FD委員会FDガイドWG1 コミュニケーション活動の重視2 人間関係の重視「鹿児島大学ベストティーチャー賞」は、平成30年度より開始された新たな取り組みです。その主たる目的は、鹿児島大学(以下、「本学」とする)で行われる教育活動において顕著な成果をあげた教員を表彰し、本学に在籍する教員の意欲向上とさらなる教育の質的向上を図ることにあります。この賞は、本学が開設する授業を担当する教員の中から2段階で選出されるものです。まず、各学部及び共通教育センターから各1名が選出されます。その指標として用いられるのは、授業運営に関する工夫や高い指導力による教育の成果等です。次に、各学部及び共通教育センターから選出された10名の中から、学長や教育担当理事・副学長をはじめとする選考委員会により、ベストティーチャー最優秀賞として最大3名が選出されます。今年度のFDガイドでは、本学最初のベストティーチャー最優秀賞受賞者である3名の先生方の授業運営に関する工夫や注意点等を紹介することとしました。それぞれ専門分野だけでなく、担当授業の位置づけも共通教育、専門教育と異なり、対象となる受講生の学年も様々です。しかし、そうした違いを超え、共通して取り入れることができ、効果を発揮するコツもあるのではないでしょうか。実りある授業のあり方を共有することにより、本学の教育における一層の質的向上につながることを期待しています。◆ 「鹿児島大学ベストティーチャー賞」とは?◆ 平成30年度「鹿児島大学ベストティーチャー最優秀賞」受賞者の声①外国語学習の目標は知識の習得ではなく、コミュニケーション能力の養成であるという前提に立って、できる限り、学生と教師の、あるいは学生間の対話活動を通じて授業が進行するように図っています。学習内容の正確な理解が重要であることは言うまでもありませんが、そこに留まらずに、習ったことをコミュニケーション行動として使えるように練習しています。円滑なコミュニケーションを可能にするためには信頼関係を築かなければなりませんが、そのための有効な方法として、できるだけ早く、個人名で呼びかけるように努めています。30名までの規模のクラスであれば1回の授業で、5、60名規模のクラスでも3回目の授業までには学生の名前をすべて覚え、授業中ばかりでなく教室外でも個人名で呼びかけることにしています。これは、学生と教員の距離を縮めるのに予想をはるかに超えた効果があるようです。学生同士も、単に同じ授業を受けているだけの関係ではなく、互いに名前で呼び合える関係になるように図っています。授業中の活動は学生がペアを組んで行うのを基本にしていますが、毎回異なる人とペアになるように工夫をしています。ペアワークで行うことは、朗読練習、翻訳練習、対話練習、小テストの自己採点等ですが、もう一つ重要な役割があります。それは、わからないところがあれば学生同士で教え合うということです。特に、前回の授業に欠席した学生には、ペアを組む学生が手助けするようになっています。ペアワークの効果も絶大で、授業を初めて一、二か月もすれば学生同士の関係が非常に密になり、クラスの一体感が生まれて活気が出てきます。▼ 鄭 芝淑(共通教育センター) ▼ 担当科目:初級韓国語Ⅰ・Ⅱ(1年次)等ちょんじすく15号12号13号14号16号17号18号19号20号11号FDガイド第18号【発行/2019年9月】ベストティーチャーに聴く授業の工夫①

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