鹿児島大学FD報告書平成31年度
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30鹿児島大学FD報告書 こうした状況の中で大学が取り得る選択肢の一つが共同教育課程の開設とそれによる教育の実現である。共同教育課程は、既存の学部・学科の枠組みを維持したままでの開設のほか、共同学科や共同学部など様々なレベルで開設が可能であり、実際に我が国の獣医学部の分野においては様々なレベルの共同教育課程が存在している。山口大学と本学は、そうした中で共同獣医学部の開設を選択した。 山口大学と本学による共同獣医学部の開設から8年が経過し、本年4月、全国で2例目となる共同学部として群馬大学と宇都宮大学による共同教育学部が開設される。共同学部という共通点はあれども、両大学が共同教育学部を設置するに至った経緯や懸念される課題等については、共同獣医学部と一致するわけではない。 今回のシンポジウムではこのような点を踏まえ、既に経験を積み重ねた山口大学と本学の共同獣医学部と開設を控えた群馬大学教育学部からそれぞれ講演者を招き、話題提供を受けるとともにパネル・ディスカッションの形で各々の認識や課題について意見交換を行うこととした。また、共同教育課程を含めた大学連携に対する文部科学省の見解についても情報提供を受けることにより、今後各大学がそれぞれの意図に沿う形で大学連携を模索していく際に示唆を与える場となることを目指した。「共同学部はなにが共同なのか」という問いを出発点として、改めて大学教育の意義やあり方について参加者とともに考えを深める機会となることを狙ったものである。3.話題提供講演①:共同教育課程への期待 ―高等教育機関の連携を巡る動向― 予定していた文部科学省高等教育局国立大学法人支援課の北岡氏が天候不良のためシンポジウムへの参加ができなくなったことから、提供資料の内容について説明を行う形をとった。資料説明については、高等教育研究開発センターの伊藤が行った。 18歳人口はこの約10年間ほぼ横ばいであったが、令和3年度ごろから再び減少局面に突入する。このことは、18歳人口が大学入学予定者数とほぼ重なる我が国の大学関係者にとって非常に重い事実である。入学定員を維持すれば、それ以前と比べて低学力者を入学させる必要性に迫られるためである。実際に、これまでの一貫して18歳人口は減少しているが、大学入学者数は増加か横ばいの状況にあり、大学生の学力層の変化は既に始まっている。 このような状況を踏まえ、平成30年11月に中央教育審議会が明らかにした「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、大学のマネジメント機能や経営力強化、大学間や地域との新たな連携の枠組み構築など、大学経営のあり方そのものの検討を促すメッセージが多数示された。具体的には、国立大学の一法人複数大学制の導入や「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築などである。 大学の経営基盤強化を目指した連携・統合の動きは既に始まっている。令和2年度には国立大学法人岐阜大学と国立大学法人名古屋大学による東海国立大学機構が設置されることとなっており、一法人複数大学制度導入の方針を表明している国立大学法人は他にもある。

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