鹿児島大学FD報告書平成31年度
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32鹿児島大学FD報告書事例報告①:群馬大学と宇都宮大学における共同教育学部の構想講師:斎藤 周 氏(群馬大学 教育学部 学部長) 教育学部は地域の義務教育教員養成に責任があり、特に中学校10教科に関する教員養成を行えるだけの体制が必要である。しかし、教員需要の低下により、第6機を迎えるころには各大学の教育学部定員が100名程度になる可能性がある。入学定員の減少は必然的に教員数の削減という事態を招く。こうした背景が、共同教育学部の設置とこれによる両大学のスケールメリットを生かした質の高い教員養成の実現という方針をもたらした。 群馬大学と宇都宮大学の場合、入学定員や専攻/分野と系の構成、取得可能な免許等について多くの共通点があった。また、隣県であると同時に人口や面積規模も近く、県内出身者比率の高さや県の教員採用車中に占める比率の高さについても似た状況であり、こうした共通性が共同教育課程設置を可能にした。系単科大学である帯広畜産大学のグループに相当する枠組みの必要性があった。そして、第3に、運営のための予算編成や将来設計などの方針を独自の戦略に基づきつつ迅速に行うには学部という単位が必要であった。 実際の教育活動については、双方向性遠隔講義システムを活用している。本学ではこれを導入した教室5つを整備しており、責任教員のほか、管理を担当する専門職員も配置している。本学教員が授業を行う場合、山口大学側では話をする教員の映像と説明に用いるパワーポイント等の画像の双方が写される。本学の側では、山口大学で受講する学生の映像が確認できるようになっている。授業では、パワーポイントの他、書画カメラを用いて骨など学生に見せたい実物や画像を示すことも可能である。また、電子黒板やホワイトボードについても準備しており、相手方の教室にて受講する学生も見ることができるようにしている。さらに、webカメラを用いることによって、手術室の様子を示すことも可能である。 授業時間外の学習を促す仕組みとしては、学生自習室の設置と学習管理システムGlexaの活用がある。共同獣医学部開講科目は全て録画しており、学生は自習室のパソコンを用いて視聴可能である。これにより、学生は充分理解できなかった内容を確認することができるほか、授業を欠席した場合でもその内容を学ぶことができる。なお、視聴履歴は教員が確認可能となっており、どの学生が視聴したかは把握できる。Glexaについては、授業資料の配布や学生への連絡、試験結果の通知など、これを基盤とした授業運営を行っている。アップロードした授業資料については、学生のダウンロード状況が把握可能となっている。 こうした遠隔システムを利用した授業を行うに当たって懸念されるのが学生の反応や実際に授業を行う教員の認識である。学生・教員双方に対しては継続的にアンケート調査を行っているが、学生については教員と同一教室で受講した場合での遠隔システムを用いて受講した場合でも満足度等に大きな違いは見られない。 ただし、一体感や臨場感についてはいくらか差が表れており、これについては改善を図る必要がある。成績については、遠隔システムの有無による違いは見られない。教員については、開始当初は機器操作に不慣れなことによる問題も生じたものの、現在は安定的に運用できており、大きな問題は生じなくなっている。 設置に当たっては、いわゆる3つのポリシーや入試方法、共通教育に至るまで可能な限り両大学で揃えることを求められた。しかし、異なる大学である以上、すべてを一致させることはそもそも不可能であり、開設から8年を経た現在は違いも生じており、何をどこまで一致させるかが課題となっている。今後、共同教育課程導入を困難な状況を打破する一つの方法として位置づけていくには、別大学同士の共同教育課程において何をどこまで共同させるかについての要件緩和が必要と思われる。

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