令和4年度鹿児島大学FD報告書
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12(文責:伊藤 奈賀子)鹿児島大学FD報告書い大学院生にとっては困難である。第2に、申し立てる相手や相談相手である。研究不正が疑われる状況に遭遇した場合、当事者に直接問いただすことも可能であるが、それによって不正行為をもみ消すチャンスを与える可能性もあることも考慮する必要がある。指導教員や研究公正責任者に対して申し立てるのであれば、研究ノートやサンプル等、関連するデータや資料を全て明らかにし、問題点を説明し、相手の納得を引き出さなければならない。それは、大学院生が1人で対処するにはかなりハードルが高い。孤独な状況で研究不正を告発し、倫理を守ろうと行動することは容易ではないのである。そのため、学部生時代の指導教員やポスドクの先輩など、信頼できる相談相手を持っておくことは重要である。また、研究に関する知識はない家族や友人でも人として守るべき倫理について意見を明らかにすることは可能であり、自身を力づける存在となり得るだろう。 同教材は大学院生以外にもポスドク、研究室主宰者、研究公正責任者の立場から問題状況をシミュレーションすることが可能である。今後も知識修得・定着を目指す研究倫理教育とは別に、様々な立場に基づき、実践的側面から研究不正の問題について考える機会を設けていきたい。

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