14鹿児島大学FD報告書 本フォーラムは、鹿児島工業高等専門学校(以下、「高専」と略記する)、鹿児島国際大学(以下、「鹿国大」と略記する)、鹿児島女子短期大学(以下、「鹿女短」と略記する)からの事例報告とそれを受けたパネルディスカッションで構成された。 事例報告①は、高専の岸田教授より「鹿児島高専遠隔授業実施から」と題した発表であった。高専では、独自のガイドラインに基づき遠隔授業を実施している。その際のツールとしては、高専機構全体で導入しているMicrosoft365と高専独自で導入しているMoodleとを、それぞれの特徴を踏まえて活用している。オンデマンド教材配信や理解度確認のための小テストの実施、学生とのコミュニケーションや課題の提出を、これらツールを用いて行っている。 DXとアクティブ・ラーニングとの接合点については、具体的な教育方法でいうと、グループワークはあまり行われておらず、PBLは高専の専門性との関係上難しい側面がある。一方、反転授業は親和性が高く、実施しやすいものと考えられる。 遠隔授業の実施に伴う課題は3点述べられた。第1に教員のコンテンツ作成能力不足、第2に学生の生活習慣の乱れ、そして第3に学生の学習成果への影響である。特に第3の点については、学習意欲の高い学生は成績への影響が小さいのに対し、学習意欲の低い学生ほど成績への影響が大きいという関係が明らかになっており、この点への対応が必要と考えられる。 そして、これを踏まえて今後教員に求められるスキルとしては、オンデマンド教材作成とファシリテーションスキルの向上が挙げられる。前者については、対面授業をそのまま録画したのでは学生の集中力も続かないことから、内容を圧縮する必要がある。後者については、遠隔でもグループワークは可能であるものの、教室のように全体を見渡すことができないため、教師の目が届かない状態でもグループ・ディスカッションなどがしっかり行われるよう工夫する必要がある。 事例報告②は、鹿国大の太田教授より「授業DX化のための初めの一歩」と題された報告であった。鹿国大では、2021年4月に学長のもとにDX推進会議を設置して大学としての方針の検討を開始し、翌5月にDX推進構想を明らかにした。教育については、このDX推進構想の中で「DX時代にふさわしい教育方法の転換・改善」を位置付けている。長期的には、DXに対応したインフラ整備を計画しており、中期的にはそれまでの環境整備を行う。そして、2022年度には、遠隔授業の実施と学生アシスタントの試行に取り組んでいる。学生アシスタントについては、基本的には教員のオンデマンド教材作成支援に当たる。これは、PC室・情報処理センターの「学生サポーター」に関する実績を踏まえたものである。4.概要報告
元のページ ../index.html#16