令和4年度鹿児島大学FD報告書
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15 今後の展望は3点あり、DXを通じて学生の学びを保障することと、学生アシスタントの活用によって教員の負担を軽減すること、そして、学生アシスタントとなった学生自身の能力開発を図ることである。これらを実現することに伴って生じる課題としては、何をどこまでDX化していくかということと、特に学生アシスタントについての予算確保がある。 事例報告③は、鹿女短の内田准教授より「対話から始める授業改善」と題した報告が行われた。特に問題提起されたのは、コロナ禍において失われた教員間のコミュニケーションである。これまで日常的に行われていた、どのような学生を育てたいかというイメージの共有も、学生の現状や教育の具体的方法についての情報共有も、対面でのコミュニケーションが難しくなることで実現できなくなっている。コロナ禍から脱し、次の段階へと進みつつある今、教員間の対話の場をいかに作るかが大きな課題である。 また、遠隔授業への転換をいかに進めるかも大きな課題である。教員自身は遠隔授業を受けた経験はほぼないため、経験したことのないことをどう教えるかが問われる。さらにいえば、教員とは世代も「当たり前」の感覚も異なる学生に如何に教えるかということも課題である。こうした課題の解決に組織として取り組むためにも教員間の対話の場の構築が重要といえる。 令和2年度以降、各大学は手探りで遠隔授業に取り組んできた。それから既に3年目となり、DXという大きな波の到来とも相まって、各機関は新たな段階の教育改善を迫られている。 遠隔授業に関する積み重ねを経て我々は今、対面でしかできないことを明らかにするプロセスの渦中にある。それは、授業改善というレベルではなく、授業も含めた包括的な教育全体の改善である。そうした教育改善のためには、「学修者本位の教育となっているか」という観点からこれまでの教育の在り方を振り返ることから始めなければならない。地に足の着いた地道な取り組みを活かしつつ、教育・学習の在り方の変革に取り組むことこそ教育のDX化に向けた各機関共通の課題である。 なお、今回のフォーラムでは、結果的に各大学における実践や課題の共有に主眼が置かれ、そこからDXへの展望やアクティブ・ラーニング再考について十分に議論を深めることができなかった。こうした企画意図と実際とのずれについては、次回以降の運営上の留意点としてここに記しておきたい。(文責:伊藤 奈賀子)5.統括

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