7ついて特に慎重な対応が求められる。そのため、当初からこの点に細心の注意を払っている歯学部の取り組みは、他部局にとって非常に参考になるといえる。 今後の課題としては、「ヒト」「モノ」「カネ」の措置が不十分であり、先にも触れたとおり、取り組みの継続性に不安がある点が挙げられる。また、教学IRの中身としてどのような情報を集め、分析を行うかについてもさらなる検討が必要である。 続いて、教育学部IRチームの事例について、錦織准教授より報告があった。教育学部の取組については、平成29年度がターニングポイントであったといえる。この当時は全国的に教員養成の質保証が強く謳われ、それと関連した新規の取り組みの予算獲得には明確なエビデンスが求められていた。同年、本学教育学部では初等教育コース設置やいわゆるゼロ免課程の廃止、定員減等の改組が行われた。また、教職大学院も設置された。さらに令和2年度にはさらに学部を改組して課程を再編成、再度の定員減、そして、全ての入試に面接を導入するという入試改革を行った。こうした改革の効果を検証する必要性がIRチーム発足の要因となった。 教育学部IRチームは、それ以前の改組に関するワーキンググループのメンバーを中心として平成30年12月に結成され、令和2年2月に要項が制定された。現在は、座長である評価を担当する副学部長と4名の教員という計5名体制で活動している。4名については、統計スキルのある教員という共通点はあるものの、それぞれの専門性や教育上担当する教科教育の分野は特段考慮されていない。 教育学部IRチームの大きな業務は、執行部の企画立案支援と情報収集・調査・分析である。特に後者については、これまで行ってきた学生調査の実施時期や内容の改善に既に取り組んでおり、経年変化を確認した上での学生指導が可能になるなどの効果が表れている。 教育学部としては、教員就職率の改善が最大のミッションとなっている。そのため、学生調査の改善により、教職志望度や教職大学院への関心等について随時確認し、学生のキャリア形成支援に向けた指導に注力している。現時点では低迷の原因解明には至っておらず、IRチームとしての大きな課題である。 その他の課題としては、データをどう整理するか、あるいは入試改革への活用等がある。学内にあるデータだけでなく、教育委員会から提供を受けたデータなどもあり、分析の対象とし得るデータは多種多様に存在する。しかし、これを情報管理に注意しつつIRチームが分析しやすいようにどのように管理するか、そして、どのように整理しておくかを早急に検討する必要がある。 2つの取り組みは、そこに至る背景についても現在までの活動についても相違点が多い。その一方、どちらも現学部長が副学部長時代に動き出されたものであり、その点では前学部長と現学部長のリーダーシップに依拠する部分が多いともいえる。部局内で組織を立ち上げ、取り組みを進めるに当たっては、やはり学部長がその必要性を認識することがまずは必要であるということが、改めて確認された。 その一方、この組織については安定的な予算上の裏付けがないままの活動を余儀なくされている。業務に専従4.話題提供②:教育学部の事例5.まとめ
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