令和5年度 鹿児島大学 FD報告書
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8鹿児島大学FD報告書 いずれの利用方法についてもそれなりに学習を支援する側面はある。特に「f.対話による学び」など、現実的には授業時間外に他者と協働で学ぶことは容易でないため、有意義な活用方法と言えよう。その一方、使い方によっては全く学習につながらない場合もあり得る。例えば、「a.効率化・時短」であれば、調べて得た情報を精査・推敲したり、複数の情報を統合したりするところまで至らなければ十分な学習には至らない。また、「e.文章の書き方」についても、生成された文章をそのまま自分の文章としたのでは全く学習にならない。 授業や学生指導を担当する教員としては、このような学生の認識・利用状況を踏まえ、どう授業をデザインするかを再考する必要がある。その際に最も重要となるのは、当該授業の到達目標はどのようなものか、学生に何についてどのように考えてほしいのかを明確にすることである。それらに応じた文章生成AIの利用を促すような授業デザインが求められているといえる。  話題提供を受け、参加者はグループに分かれ、「生成AIは学習の何をどう支援するか」「そのために教員は何をしておくべき・すべきか」という2つのゴールに向けてディスカッションを行った。参加者の中には、生成AIの利用経験がある教員とない教員とが混在していたところから、経験者についてはどのような利用をしてどのような感想を持ったか、未経験者についてはどのようなイメージを持っているかを共有するところからディスカッションを開始した。 いずれのグループにおいても非常に活発な議論が行われ、その内容については最後に発表を通して共有した。 上記の2つのゴールに対して示された意見の1つとして、コミュニケーション能力の向上が挙げられる。文章生成AIの特徴として、良いプロンプト(指示文)に対しては良い回答が得られる可能性が高い等、プロンプト次第で回答の制度が著しく変わるものである。しかしそれは必ずしも文章生成AIに限られたことではなく、人間同士のコミュニケーションであっても、適切な話し方や内容でなければ良いコミュニケーションとはならず、一定の共通性が認められる。自分にとってより効果的な学びを得るという目的に応じた文章生成AIを使用するよう、教員は授業デザインや課題のデザイン、具体的な指導を通して学生を導いていく必要がある。 その前提として、とりあえず使用してみることの必要性も指摘された。使用したことがなければ指導のしようもなく、学生から相談を受けても対処できない事態が生じ得る。自身が担当する授業においての文章生成AI利用に関する方針を明確に示すためにも、まずは一度使用してみることが重要だといえる。 生成AIについてはまさしく現在進行形の課題であり、その使い方について正解があるわけでなく、望ましくない利用の仕方を学生がしてきても、具体的な対応方法について定めることができているわけでもない。個々の教員が自身の担当する授業でどのように対応するかを考えることはもちろん必要かつ重要であるが、大学あるいは部局単位での方針も必要であろう。 本学では6月27日付(注:11月28日付改訂)で、学生を対象とした学習に関する生成AI利用に関する指針と教員の対象とした教育に関する生成AI利用に関する指針がそれぞれ教育担当理事名で発出されている。今後は必要に応じてこれを改訂するとともに、学生による望ましくない利用への対処方針の検討などが求められる。(文責:伊藤 奈賀子)5.グループ・ディスカッション

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