11正式に発行する予定となっている。こうした状況にあるディプロマ・サプリについて、そもそもこれがヨーロッパで誕生し、その後我が国に導入された経緯やディプロマ・サプリに求められる機能等について説明があった。また、本学で発行しようとしているディプロマ・サプリの具体的な様式等についても紹介があった。 ディプロマ・サプリは学位記に添付される補足資料であり、学生が獲得した能力や学生生活の中で参加した諸活動などを示すものである。学位記や成績証明書では記載し切れない具体的な情報を可視化する機能がある。しかし、それだけで全てが可視化されるわけではなく、また、学位記の補足資料であることから、例えば就職活動での活用等には課題も多い。最終的には学位記の補足資料として正式に発行するとしても、それ以前の段階での取り扱いをどうするか、学生の学びをさらに促すための活用法としてどのようなことが考えられるかについては、今後も検討が必要である。 続いて、午前の部に参加した学生3名が、午前中のワークショップで作成した成果物に基づいて自身のこれまでの学習成果について発表した。ポスターセッション形式で発表を行い、教員がそれぞれの成果物について学生からの説明を受けた。 この発表から明らかになったことは、学生にとって成果物を作成することだけでなく、それについて他者に説明し、質疑応答を行うという対話の重要性である。学習の振り返りにおいても他者との対話の重要性が示されたが、そうして振り返った内容についてさらに問い直すという意味での2段階の振り返りによって、学生の学びは一層深化し、その後の学びをより適切な方向に促す効果が期待できると考えられる。 最後に、発表を行った学生も加わる形でグループ・ディスカッションが行われた。「学生自身による学習成果の可視化をどう促すか」という問いについては、午前の部で行われたようなワークショップの必要性が指摘された。また、「教員は可視化された学生の学習成果を教育改善にどう活かすか」については、先述の通り、ディプロマ・サプリでは発行時期との関係で改善に活かしづらい側面があるものの、学生と教員との対話を通じて学生の考えを把握し、更なる学生の能力伸長に向けた教育内容・方法を考えることが必要であるといえる。いずれについても明確な答え、特効薬となるような活動が挙げられるものではない。それでも、学生の能力伸長と学習成果の可視化とをどう結び付けるか、それらと教育改善とをどうつなげるかについて考え続け、実際に行動することの重要性が改めて明らかになったといえる。(文責:伊藤 奈賀子)
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