14(文責:伊藤 奈賀子)鹿児島大学FD報告書 最後に、3つの情報提供を受けたパネル・ディスカッションでは、いくつかの質問に対して先生方の考えを伺った。その中で特に印象に残った3点についてここで述べる。 第1に、コロナ禍以前と何が変わったと思うかという質問に対する中島先生からの「対面という束縛からの解放」との回答である。これまでの学校教育においては、例えばインフルエンザの流行期など学校に来られない児童・生徒・学生が必ず出ることが分かっていながら、環境の未整備などを理由にして自宅での学習を可能にするような取り組みを十分行ってこなかった。対面でなければならないと考えるのではなく、遠隔授業という選択肢も含めた形で学生にとってより良い授業の環境をどう整備し、どう実施していくかを考えられるようになったのは、より良い教育の実現にとって非常に価値あることだろう。 第2に、同じ質問に対して宮田先生は、授業を振り返るようになったことを挙げられた。対面授業の場合、一過性のものと捉えており、振り返ろうとすることもあまりない。しかし、特にオンデマンド教材を作成する場合、音声の確認等を含めて自分で視聴するようになる。その結果として授業の構造化、授業改善が進んだと考えられる。教員自身による授業の振り返りは、学期末のワークショップを通じては本学でも行われてきたものの、必ずしも一般的な授業改善のための活動とはなっていない。対面ではむしろ難しいことがオンデマンド型授業であれば容易にできるということを、今後はより積極的に活かしていくべきかもしれない。 そして第3に、教員同士のちょっとした情報交換の場やコミュニケーションの重要性について、3人の先生方それぞれから発言があった。遠隔授業で使える機器やツールに関する情報の共有だけでなく、仲の良さや自分がつらいときに声をかけてくれる同僚の大切さなどは、コロナ禍の生活に関する学生インタビュー調査の結果とも共通する視点であったように思われる。コロナ禍以前に戻ったこともあれば、変わったこともある中で、教員同士、教員と学生、そして学生同士のコミュニケーションをいかに担保し、活性化していくかは、今後の大学にとって非常に大きな課題といえる。
元のページ ../index.html#16