18鹿児島大学FD報告書れたCBTへの適応等の問題を受け、そうした課題の解決策の一つとして情報活用能力の育成は重要性を高めたといえる。 初等中等教育においてはGIGAスクール構想を通じてPCやタブレット等が整備されたことを踏まえ、ファイル共有やチャットでの会話、話し合いの記録など、状況や目的に応じて子どもたちが多様なツールを使いこなしながら学習を進めている状況がある。あまりICT活用に長けていない教員も、使い方を子どもたちに委ねることで一緒に成長していくことにつながるという。特にデジタルホワイトボードの活用においては、これまでの黒板では子どもが参加できなかった活動への関与が可能になり、結果として子どもたちの主体的な学びにつながる可能性が示唆された。それはつまり、子どもたちが、自分はどう学ぶかを自分で考え出せることを意味している。このことは、今後の学校教育の在り方や意味を考えるうえで非常に重要といえる。 ICT活用をめぐっては、小学校や中学校ではプログラミング教育が推進され、高校に関しては教科「情報」があり、「情報Ⅰ」については令和7年度より大学入学共通テストにも導入される。こうしたことから、現状は学校や生徒によって情報活用能力にはかなりのばらつきがあるものの、今後大学に入学してくる新入生は一定程度のスキルを身につけ、ICTは子どもたちにとって、そして将来の社会において普段使いの道具になると考えられる。そうした新入生を迎える大学として教育を、授業をどのように変えるか、教員個人としても大学という組織としても早急に対応を検討する必要がある。 情報提供①では、本学総合教育機構共通教育センター准教授の川端訓代先生より担当する授業における実践の報告があった。川端氏は、特に初年次の学生を対象とした必修授業においてはモチベーション向上のために、専門に繋がる統計学の授業では理解を深めるためにICTを積極的に活用している。 全学必修科目「初年次セミナーⅡ」においては、論証型レポート作成を目指す授業であることを踏まえ、生成AIに積極的に触れさせる取り組みを行ったとのことである。この前提として、学生を対象としてアンケートを取った際に予想外に学生が生成AIを使っていないこと、使っていても検索や質問程度で多くの教員が懸念しているようなレポート作成などに使用したとの回答は少なかったこと等に対する驚きがあった。生成AIの発展のスピードや社会への浸透を考えた場合、学生がまだ必要性や有効性を理解しておらず、生成AIを利用していないことは、必ずしも肯定的に評価できるとは限らない。むしろ大学で有効な使用方法を教えていくことも必要である。 統計学に関する授業においては、原理の理解や実践力育成等、目的に応じて様々なICTが活用されている。授業はハイブリッドで行われており、授業資料のスライドだけでなく動画も提供することで学生の自主的な復習を促すとともに、欠席した学生の自習にも対応している。デジタルホワイトボードなどのツールも活用することで授業の質的向上も図られており、授業の目的・目標に応じたICT活用の重要性とその有効性が示されていたといえる。 情報提供②は本学大学院教育学研究科助教の高瀬和也先生から、情報の「活用」「対応」「技術開発」という3つの視点から話題提供を受けた。 情報の「活用」としては、大学院生による離島での遠隔授業プロジェクトが取り上げられた。鹿児島県内ではMicrosoft Teamsが導入されており、その機能を活用した教育活動が実施されていた。具体的には、スライドの共有とリアルタイムでの書き込みや共有ノートを通じた全員での情報共有などである。プロジェクトに参加した大学院生の反応については、こうした取り組みを通じて自身のICT活用や子どもへのその指導に対する自身が向上し、操作や機器自体に対する苦手意識が減少したという。つまり、こうした活動は、情報活用に関するだけでなく、5.情報提供報告
元のページ ../index.html#20