令和6年度 鹿児島大学FD報告書
12/23

10(文責:伊藤 奈賀子)鹿児島大学FD報告書なるものである。共同獣医学部においては、Day-One Conpetenciesの担保という形で、卒業翌年度初日でも獣医師としての業務を行うための最低限の技術や能力を保証できる。本学の場合、共同獣医学部や医学部、歯学部といった国家資格にかかわる学部であればこのような能力の可視化が可能であっても、学生の進路が異なる学部では同様の枠組みを構築するのは困難である。しかし、卒業時までにいかなる能力を身につけさせるか、何ができる学生を社会に送り出すかを考え、その考えを学部全体として共有して教育活動に取り組むこと、そうした取り組みによって学生が身につけた能力を的確に評価して次の改善に繋げる仕組みを整備することは、専門性を問わず可能である。 第2に、教育改善のPDCAサイクルを完結させることである。PDCAという表現は、昨今の大学教育の改善に関してよく用いられている。しかし、実際のところ、「C」、つまり評価の部分で課題がある場合が多い。授業アンケートに注目してみると、どの部局でも実施はされているものの、その結果を次の「A」につなげることが十分できていない場合が少なくない。授業アンケートに限らず、学生の学習成果や教員による教育活動を評価するのはその結果を次なる改善に繋げるためである。成果の評価を単独で考えるのではなく、次なる改善に活かすための評価の仕方を積極的に考える必要がある。 この点を踏まえて第3に、授業アンケート結果を改善に繋げるという観点から項目見直しや問い方の修正を行い、個々の授業改善のためのものから組織的なカリキュラム改善のためのものへと発展させた点である。授業アンケートをカリキュラム改善に活かすことは、授業アンケートが当該授業担当者だけのものと捉えていては不可能である。カリキュラム改善に繋げるにはどのような質問項目を立てればよいか、どのような問い方をすればよいかを考えたうえで必要な見直しを随時行い、カリキュラム改善と個々の授業改善を同じ方針に基づいて実施することが重要である。 有村氏による講演は、授業アンケートの活用および改善という点で非常に示唆に富むものであった。本学では、授業アンケートの質問項目を全学的に統一するなどの取り組みは行っておらず、結果の分析や教育改善への活用についても基本的に各部局に任されている。その点で部局の負担が重いとの指摘もあり、部局の負担軽減については全学的なFDの推進という観点から一定程度検討を行う必要がある。しかし、具体的なカリキュラム改善に繋げるには、教育活動や学生の実態を把握する部局での取り組みが不可欠であり、今回の講演内容が実際の教育改革、具体的には授業アンケートの改善に活かされることを願う。

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る