12鹿児島大学FD報告書 まずは、志學館大学の杉山氏より、志學館大学での取り組みについて報告があった。志學館大学では、「志學館まなびプラン」というICTを活用した学びの機会に関するプロジェクトを進めている。これに関連して、学生がそれぞれの学びの機会についてどう感じ、考えているかを把握するための方法の一つとして授業アンケートが位置付けられている。 アンケートの活用については、集計結果を確認後、教員が改善に向けた計画書を提出することが義務付けられている。そして、その中で以前示した改善策に対する達成度の振り返りに関する項目がある点に特徴がみられる。組織的な教育改善という点では、集計結果をIR室において分析し、現状と課題を明らかにすること、また、特に評価の高かった教員2,3名によるナイスティーチャー講演が行われており、ノウハウの共有が図られている。現在の大きな課題は、回答率の低さと、アクティブ・ラーニングに関連の深い、予復習時間に関する項目の改善が十分でなく、学生の納得度が低い状況という2点である。 続く鹿児島純心大学の久木田氏からは、全学的に行われている授業アンケートと、教育・心理学科独自で昨年度より開始した学修成果アンケートについて紹介があった。授業アンケートについては、結果を授業担当者だけでなく、学科長以上の管理職も閲覧可能にしている。これにより、教員と学生の間にトラブルが生じた場合などにも対応が図りやすくなるという。 授業アンケートの課題としては、志學館大学と同じく学生の回答率の問題がある一方、以前は1教員当たり1科目のみの実施とされていたため、現在でもそのように考えて授業アンケートを十分実施しない教員がいることである。また、あくまで授業担当教員の授業改善への努力を促すのみであり、組織的な教育改善につながっていない点も挙げられる。 学修成果アンケートについては、ディプロマ・ポリシーの達成度測定を主な目的として開始したものである。まだ開始したばかりであって確定的なことを述べるのは難しい段階であるものの、今後は経年変化を追跡する予定であり、これによって学生の認識の変容を見ることが可能になる。また、各学年集団の特徴も見られるようになることから、組織的な教育改善への利活用が期待される。 最後に第一工科大学の萩原氏から2023年に行われた授業アンケートおよびその結果を受けた授業改善計画書の改善について報告があった。第一工科大学においては、これまで紙ベースで行われていたアンケートをGoogleフォームで回答可能とし、その集計結果を独自開発したTeamsアプリで閲覧可能とした。今後は学生による授業アンケートへの回答から教員による授業改善計画書の作成・提出に至る一連のプロセスをすべてアプリ上で実施できるよう、開発を進める予定であるという。 このアプリについては、第一工科大学の教員が専門性を活かして開発したものであり、それができたことそのものが大学の強みを生かした取り組みといえる。志學館大学や鹿児島純心大学、また本学でもシステムを用いた授業アンケートへの回答が行われているものの、授業アンケートの実施からフィードバックに至るすべての過程をアプリ上でできるようにするというのは先進的な事例であり、まさしく工学系の大学ならではだといえる。 3人の教員からの報告ののち、事前に参加者から寄せられた質問に対しての回答が行われた。 第1に、授業アンケートの対象科目についてである。教育機関によって違いがあり、受講者数の少ない科目や実技・実習系の科目を対象外としている教育機関もある一方、そういった制限を設けていない教育機関もあった。受講者数が少ない場合はそもそも統計的に意味のあるアンケートといえるかに問題があるものの、学生の声を取り入れる手段として一定の意義はある。こうした科目でどのように学生の声を聴くかについては、アンケート以外の方法も含めて教育機関ごとに考える必要があるだろう。4.事例報告及び質疑応答
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