Ⅰ2鹿児島大学FD委員会委員長(教育担当理事・副学長)有倉 巳幸鹿児島大学FD報告書 大学におけるFD活動は、これまで授業改善を通じた教育の質向上にとどまらず、専門性の向上や学生支援の充実など、高等教育機関における教育の質保証のツールとしての機能を提供してきました。2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)に示される、学修者本位の教育への転換、多様性と柔軟性の確保、地域との連携という視座を踏まえると、鹿児島大学のFD活動も充実に向けてさらにアップデートすることが求められるでしょう。 さて、鹿児島大学のホームページにある「鹿児島大学のFD活動」には平成22年度以降のFD活動の詳細が報告されています(https://www.kagoshima-u.ac.jp/education/fd.html#000825)。報告書には、本学におけるFDの取組の成果と課題を時系列に知ることができます。当初は、FDおよびSD活動の啓発であったのが、主体的な学修を促す優れた授業実践やカリキュラムの工夫の紹介、学びのポートフォリオにみられる評価のあり方、教学IRの点からFD活動を考えていくなど、テーマの内容が徐々に広く深くなってきたように思います。これに伴い、FDに関心をもつ教職員の人数も増え、授業改善に対する意識も徐々に高まってきましたが、まだ途上だと感じています。また、社会の変化に伴い、求められる資質能力も変わっていくだけでなく、より多くの人々にそうした資質を身に付けてもらうという意味において、教育の質を向上させる取組に終わりはないと考えています。 高等教育機関の使命の一つに教育の内部質保証が挙げられますが、これは平成26年に本学教育研究評議会が決定した「鹿児島大学のファカルティ・ディベロップメントに関する指針」に示されている三つの責務が果たされることで成立するものです。まず、大学の責務として、その教育理念や教育目標を実現するために、全学のFD活動の内容や方法を点検・評価し、その結果を踏まえ、適宜、各部局の環境整備及び各教員のFDへの取組に対して支援を行うことが挙げられます。次に、部局等の責務として、カリキュラムが教育目標や3ポリシーと整合しているかを点検・評価し、必要に応じたカリキュラムの開発や改善に努めることが挙げられます。そして、教員の責務として、自らが担当している授業の目標やシラバスの検討を随時行い、学生理解・支援、授業内容、授業方法、教育評価及びカリキュラム開発・改善に関する知識・技能を高めることに努めることが挙げられます。これらの責務が十全に果たされてこそ、教育の質保証が謳えると言えます。 最後に、令和7年2月に出された中教審答申「我が国の「知の総和」向上の未来像〜高等教育システムの再構築〜」について触れておくと、①知の総和の向上、②教育システムの再構築、③地域社会との連携強化の視点が示されており、①については、研究力の強化や国際競争力の強化が、②については教育の質保証として教育プログラムの質を保証するための評価システムの導入と、オンライン教育やモジュール型のカリキュラムといった柔軟な学習環境の提供が、③については、地域貢献活動の推進や地域企業との協力がそれぞれ挙げられています。これらは、鹿児島大学の教育・研究・地域貢献に係る活動をさらに充実させていく重要な視点になると考えています。こうした視点をもって、本FD報告書を通読頂き、鹿児島大学の教育の質を向上させるためには、何を維持・向上させ、何を改善していかなければならないのか、批判的に考えて頂くことを期待しています。令和6年度FD(ファカルティ・ディベロップメント)報告書作成にあたって
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