7れていた。丁寧な返答というのはすべての学生に個別でということを意味するわけではない。大薗氏の講演の中でも言及されたが、教員には多様な業務がある中でコストパフォーマンスも考える必要がある。学生の教育成果を高めると同時に効率的な授業運営についても考える必要があるといえる。 学生とのコミュニケーション以外に特に言及された点として、坂巻氏からは「教員が面白いと思っていることを面白く伝える」ことの重要性が示された。ここでの面白いというのは決して笑えるということではなく、興味深さを示すものである。授業としては「学生に理解してもらわなければならないこと」「できるようになってもらわなければならないこと」も多々ある。その一方、タイムリーな話題や専門家として特に注目してほしい問題なども授業に積極的に取り入れることで、学生のより能動的な学びにつながるのではないか。少々の脱線を受け入れた授業設計というのも必要だといえる。 大薗氏からは、デモ実験など、実際にして見せることでより深い学びにつながることが指摘された。一昨年度の研修会でご講演いただいた坂尾氏とも共通する認識が示されており、ベストティーチャー賞受賞者に多く見られる取り組みの一つといえるかもしれない。また、大薗氏は自身の特技であるマジックも積極的に取り入れており、それが専門である心理学とつながることで、学生の関心をより引き付けることにも成功している。必ずしも授業に活かせる趣味や特技を持つ教員ばかりではないとしても、学生を授業に集中させる手立ての引き出しを増やすことも、教員には必要といえる。 話題提供の後、参加者は個人とグループそれぞれの単位でワークを行った。 まずは、レクチャーとして、授業設計や目標設定の要点を説明した。授業設計については、授業改善サイクルとしてのADDIEモデルを紹介し、「分析」「設計」「開発」という3つの段階を往還的に踏みながら考えることが重要であることを指摘した。そして、目標設定に当たっては、「知識」「技能」「態度」という3つの側面それぞれについて考える必要があることを述べた。ただし、全ての授業でこの3つをすべてカバーしなければならないわけではなく、カリキュラム全体でカバーすれば十分であり、それぞれの授業の特性やカリキュラム上の位置づけを踏まえた役割分担も積極的に行う必要があることには留意しなければならないことを補足した。 その後個人ワークとして、自身がこれまでに実施した授業を振り返った。新任教員とはいえ、他大学や他の教育機関で授業経験を持つ教員も多いため、ゼロから授業を考えるというよりは、自身の経験を素材として振り返ること5.ワーク
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