臨床心理学研究科

教授

稲谷 ふみ枝

超高齢社会における心理的支援に関する研究

超高齢期における発達を促進する心理社会的課題と心理的支援

スウェーデン・ウプサラ大学大学院研究者らと研究交流

 世界保健機構(WHO)の定義では、日本は「超高齢社会」であり、世界に先駆けて超高齢社会の課題と向き合うことになります。人は老いることでどのような心理的喪失や悲嘆や葛藤を経験するのか、それによってどのような心理的影響があるのについて研究しています。
 心理学において超高齢期の発達課題については「老年的超越(※1)」という用語が提起されていますが、人生の終末期でおこる変化のなかで、人はどのように適応し自我の発達を遂げることが可能かについてひとつの仮説があります。E.H. エリクソンらは、人間の生涯発達において人生の最終ステージでは、ケアを受け入れ、また必要であれば助言する、そのような相互依存を信頼することが必要であり、コミュニティにおける世代間のつながりが適応を促進することができると説明しています。
 私は、これまで世代間のつながりを促進する取り組みを心理学的に研究してきました(祖父母と孫の関係性の研究、地域における「私のアルバム」プロジェクトなど)。これから認知症高齢者を理解し関わる方法が必要となります。特にパーソンセンタード・ケア(※2)の考え方に基づいた、認知症の高齢者が感じている感情や感覚を理解して、共感的にコミュニケーションをとって関わる方法(バリデーション法など)を、アメリカやフランス、スウェーデンの研究者や実践者を招いて、実践による効果を検証しています。 

介護施設スタッフや家族のためのストレス支援プログラムの開発

鹿児島市の介護施設におけるフランスの講師による介護職員への研修

 超高齢社会では、高齢者本人への支援のみならず、長い介護のなかでは、介護をする側の職員さんたちやご家族のストレス支援や心理的サポートが必要となります。施設のスタッフ不足により過剰負担となり、介護離職が進むという悪循環が起こっています。私たちはどんな社会で生きたいか、介護福祉職の人だけでなくひとり一人が当事者となって、自分はどんなケアを受けたいか、家族へのケアの在り方を含めて考えることが鍵となってきます。
 そこで、介護施設スタッフに対しては専門職としてのワークストレスを予防しバーンアウト(※3)を軽減するような教育プログラムを開発して、介護現場で実践してその効果を検証しています。
 また、ご家族のストレスに関しては、カウンセリングや心理教育(※4)を通じて、単なるストレス支援ではなく、高齢者と家族を最後のときまでつなぐ関わりの在り方を検討しています。

用語解説

(※1)老年的超越 EH・エリクソン(1990、2001)とJ・エリクソンらは、人の生涯をライフサイクルに沿って9つの発達段階に区分し、各段階における自我発達課題とその危機について述べている。超高齢期の発達課題については「老年的超越」、人生の終末期でおこる変化を含めた第9段階が提起された概念のこと。
(※2)パーソンセンタードケア 英国の臨床心理士トム・キットウッドによって提唱された認知症ケアの基本的考え方。認知症という疾患の側から認知症者を捉えるのではなく、認知症という病とそれによる障害を抱えて苦悩する個人として認知症者を捉えて多面的な援助によってそのアイデンティティを支えようとする。個々人のその人らしさ(personhood)の連続性を支持すること。認知症者と健常者が話し合いながら認知症ケアの構築を進めている。
(※3)バーンアウト バーンアウトとは、それまで熱心に仕事等に取り組んでいた人が、燃え尽きるように、無気力になったり心身の疲労や情緒的な消耗感を感じたり達成感が得られなくなること。対人援助職のストレス反応として捉えられている。
(※4)心理教育 クライエントやその支援者などに対する予防、教育、開発志向の心理的な取り組みを説明した教育のこと。

Profile

臨床心理学研究科

教授

稲谷 ふみ枝

スウェーデン国立リンシェピング大学留学後、琉球大学大学院教育学研究科教育学修士取得。久留米大学大学院心理学研究科博士課程修了(心理学博士)。臨床心理士。1st International Conference Quality of Life & Psychology、Award :First Poster Prize ("QOL&心理学"第1回国際大会ポスター賞・第一位受賞)、日本行動医学会・内山記念賞・共同受賞。専門は、生涯発達心理学・高齢者臨床心理学・健康心理学。実践としては、病院でのメンタルヘルス支援や福祉施設職員や家族介護者に対するストレスマネジメント支援。高齢者理解の臨床心理学 2003 ナカニシヤ出版等、多数。

学生(受験生)へのメッセージ

 大学院に行く前に、英国やスウェーデンに留学し高齢者施設でアルバイトをしました。福祉の先進国と言われていた国での家族関係や制度を学ぶ機会を得ました。また大学院を出てからは祖母の介護を経験するなかで、もっとできることがあったのではないかと思うようになりました。そのような経験を通して人間は死ぬまでにどのような発達を遂げるのか関心をもつようになりました。それが生涯発達心理学を専門に研究をする原動力になったと思います。

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