医学部 医学科

教授

桑木 共之

情動の生物学的基盤解明

回り道(振り返れば準備期間)

マウス生体情報の無麻酔・無拘束記録方法の開発

 私が研究者生活を開始した1980年代は、哲学はもちろん意識や感情やといったテーマを生物学で扱うことはタブー、あるいは百歩譲っても困難すぎるので手を出さない方が良いと考えられていた時代でした。私自身も特別な突破口のアイデアを持っていた訳ではないので、先ずは脳に関連した基礎知識を得るべく脳を構成する物質の生化学や当時最先端技術だった電気生理学(*1)を学びました。大学院生時代に延髄(*2)に存在する循環中枢(*3)の解明に運良く参加することができ、大学に職を得た1990年代には、当時盛んになってきた遺伝子改変動物(*4)を研究に取り入れるべく、それまでラットで培ってきた血圧測定や交感神経の活動記録技術を体重が約1/10のマウスでもできるように技術改良に勤しみました。それでも上記のタブー意識は根強く、意識や感情が結果に影響しないように麻酔下の動物で研究することが望ましいと公言する研究者も大勢いました。美しい景色にはっと息をのんだり、好きな娘にドキドキしたりは文学の対象であっても医学生物学の対象ではありませんでした。

情動の身体表出メカニズム

オレキシン神経細胞による闘争・逃走反応(別名ストレス防衛反応)制御

 技術屋としては楽しくても、研究者としては自分の初志の方向に進めていないと悶々としていた1990年代の終わりの頃、オレキシンという視床下部(*5)に存在する神経細胞のみで産生される神経伝達物質が発見されました。視床下部は闘争・逃走反応(*6)に際して筋肉へ酸素や栄養の供給を増加させる為に循環・呼吸を同時に活性化させる責任部位として知られていた脳部位です。そこでオレキシンこそが闘争・逃走反応に際して循環・呼吸の同時活性化を司る物質と推定し、実験で確かめたところその仮説の正しさが証明されました。実際には喧嘩などしなくても、危険を感じただけで闘争・逃走反応は起こります。つまり、怒りの感情が身体をコントロールする脳神経回路を特定できたことになります。オレキシン神経の過剰興奮は高血圧に繋がるという研究結果もあります。医学的立場から言えば、「病は気から」の神経回路の少なくとも一部を解明できたと考えています。
 一方で脳には積極的に身体をリラックスさせる機能も備わっています。経験的には万人が知っている「笑う門には福来たる」の脳内メカニズムを解明することで予防医学にも貢献することが現在のテーマです。

用語解説

*1:ガラス微小電極を用いて神経細胞の電気的活動を記録する方法。
*2:大脳と脊髄との間にある脳部位。恒常性の維持に必須。
*3:心臓や血管の収縮度を決めている交感神経・副交感神経の中枢部位。
*4:遺伝子工学技術を用いて作出された、特定の遺伝子のみを改変した動物。哺乳動物で最初に成功したのはマウスで、現在もマウスが多用されている。
*5:大脳皮質に覆われた脳の中心部に存在する構造。本能行動などを司る。
*6:危険に遭遇した際に動物は、状況に応じて闘争・逃走反応か死にまね(すくみ)反応を起こす。

Profile

医学部 医学科

教授

桑木 共之

1981年東京大学理学部生物化学科卒業。1985年筑波大学大学院医科学修士修了。1992年医学博士(東京大学)。藤沢薬品工業研究員、東京大学医学部助手、千葉大学医学部研究教授を経て、2008年より鹿児島大学教授。専門は自律神経生理学、脳科学。医学科・大学院の専門教育の他に、全学共通教育科目として「医学・脳科学入門&実験」「医学・行動心理学入門&実験」を開講中。

学生(受験生)へのメッセージ

 大学を受験するならきちんと人生設計をしてそれに見合った大学・学部を選ぶべきというお節介な先輩の言葉を真に受けて悩んだ末、「人生の意味とは何か」という問いに満足な回答を与えてくれる哲学や宗教を見つけられなかった私が辿り着いた答えは、そのような問いを発するのは脳の仕業なので脳の仕組みを解明すれば自ずと答えが見つかるはず、という発想の転換でした。脳を理解するという自分探しの旅をいまだに続けています。

他の研究者

農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター

准教授

吉﨑 由美子

共通教育センター外国語教育部門

講師

二村 淳子

共通教育センター初年次教育・教養教育部門

准教授

今井 裕

高等教育研究開発センター

助教

森 裕生

農学部 食料生命科学科

准教授

池永 誠

鹿児島大学病院 心臓血管内科

講師

窪田 佳代子

医学部 医学科脳神経内科・老年病学

助教

﨑山 佑介

法文学部 人文学科

准教授

多田 蔵人

医学部 発生発達成育学講座小児科学

准教授

岡本 康裕

教育学部 技術科

准教授

浅野 陽樹

教育学部 学校教育教員養成課程(心理学)

准教授

島 義弘

工学部 先進工学科(情報・生体工学プログラム)

助教

岡村 純也

工学部 先進工学科(化学生命工学プログラム)

助教

新地 浩之

工学系 建築学専攻

准教授

鷹野 敦

教育学部 教育学科

准教授

髙谷 哲也

医学部 医学科

講師

柏谷 英樹

工学部 先進工学科(電気電子工学プログラム)

准教授

渡邉 俊夫

工学部 先進工学科(化学工学プログラム)

教授

武井 孝行

工学部 先進工学科(機械工学プログラム)

教授

片野田 洋

法文学部 人文学科心理学コース

准教授

榊原 良太

法文学部 法経社会学科

准教授

酒井 佑輔

歯学部 歯科生体材料学

講師

河野 博史

歯学部 小児歯科学

准教授

岩﨑 智憲

歯学部 歯科矯正学

教授

宮脇 正一

鹿児島大学病院 発達系歯科センター 口腔保健科

助教

藤島 慶

共同獣医学部附属動物病院

助教

岩永 朋子

共同獣医学部 獣医学科

教授

田仲 哲也

共同獣医学部 獣医学科

教授

帆保 誠二

水産学部 水産学科

准教授

田角 聡志

水産学部 食品生命科学分野

准教授

内匠 正太

理学部 理学科(化学プログラム)

准教授

児玉谷 仁

理学部 理学科(数理情報科学プログラム)

准教授

松本 詔

法文学部 法経社会学科

准教授

上原 大祐

理学部 物理科学科

准教授

永山 貴宏

農学部 農業生産科学科

教授

後藤 貴文

工学部 環境化学プロセス工学科

教授

二井 晋

理学部 物理科学科

教授

小山 佳一

共同獣医学部 共同獣医学科

教授

三浦 直樹

国際島嶼教育研究センター

教授

高宮 広土

医学部 腫瘍学講座分子腫瘍学分野

准教授

河原 康一

国際島嶼教育研究センター

准教授

山本 宗立

グローバルセンター

講師

市島 佑起子

共通教育センター

准教授

藤田 志歩

共通教育センター

准教授

鄭 芝淑

臨床心理学研究科

教授

稲谷 ふみ枝

歯学部 口腔顎顔面補綴学分野

教授

西村 正宏

医学部 保健学科 理学療法学専攻

教授

牧迫 飛雄馬

役員

研究・国際担当理事

馬場 昌範

水産学部 水産学科

教授

小松 正治

水産学部 水産学科

助教

遠藤 光

農学部 農林環境科学科

准教授

鵜川 信

農学部 食料生命科学科

講師

加治屋 勝子

農学部 農業生産科学科

教授

坂上 潤一

工学部 化学生命工学科

教授

門川 淳一

工学部 電気電子工学科

准教授

奥田 哲治

工学部 機械工学科

教授

松﨑 健一郎

理学部 生命化学科

教授

内海 俊樹

教育学部 保健体育教育

講師

與儀 幸朝

教育学部 数学教育

准教授

和田 信哉

法文学部 法経社会学科

准教授

農中 至

教育学部 家政教育

准教授

黒光 貴峰

高等教育研究開発センター

准教授

伊藤 奈賀子

教育学部 美術教育

教授

桶田 洋明

法文学部 人文学科 心理学コース 

准教授

山﨑 真理子

トップページに戻る