共通教育センター外国語教育部門

講師

二村 淳子

翻訳される文化・藝術:東アジア絵画の解析

東西文化の交渉・接触・伝播・変容・反作用

『常玉1895-1966:モンパルナスの華人画家』2018年、日本で初めて常玉を紹介する書籍を出版しました。

 一つの国の文化が、海を越えて新しい土地に入ると、決して同じものには留まりません。インド料理が、英国経由で日本に入って「カレーライス」という別モノとして定着したように、そこには、ある種の「翻訳」が加わります。料理にしろ、思想にしろ、こうした、移動・伝播しながら形や意味を変えていく「文化」について分析をする「比較文化研究」(*1)が、私の研究です。具体的には、日本・中国・ベトナムといった東アジアの国々が、どのようにして、「美術」(*2)を西洋から受容し、自らのものとすべく整えてきたのかということに焦点を当てています。
 例えば、パリで活動していた中国人画家、常玉(Sanyu, 1895~1966年)が、私の研究テーマのひとつです。パリの東洋人画家というと、藤田嗣治が有名です。しかし、中国やベトナムといったアジアの画家たちも20世紀初頭のパリで活躍をしていました。常玉は、裸婦画に中国山水画の遠近法を持ち込み、洒落っ気のある裸婦画を確立しました。また木炭の代わりに書道筆でスケッチをしていたといわれています。西洋と東洋の美学と技術を繋げようと、一生をかけて作画に取り組んだ常玉の作品は、長い間忘れられていたものの、現在、アジア最高値で売買されています(*3)。

藝術とアイデンティティ:絵画作品からの問いかけ

マイ・トゥこと、Mai Trung Thứの絹画作品。Jeune femme (若い女性)と題された1942年の作品。絹画着色、31.5×22cm。

 ベトナムの近代絵画も研究対象です。フランスの植民地だったベトナムにおいて、どのような経路で「美術」という言葉と概念が入ってきたのか。どのような目的で、フランス人たちはハノイに美術学校を設立したのかということを調べているうちに、興味深い発見がありました。ベトナム人たちは、フランス経由でジャポニスムを受容したということです。
 ジャポニスムというのは、19世紀後半に欧州に広がった日本趣味のことですが、単なる趣味に終わらず、絵画を近代化する動力や理論的支えになった現象です。例えば、フランス経由で日本的な要素を受容した画家のひとりに、マイ・トゥ(Mai Trung Thứ, 1906~1980)がいます。アオザイ姿の美人を得意とした彼の絹画作品は、女性の顔の表現(引目かぎ鼻、おちょぼ口)、浮世絵の構図(大首絵)など、いくつかの日本との類似点が認められます。構図的にも、歌麿や橋口五葉の画を思い出されるでしょう。
 比較文化研究は、ものごとを様々な角度からみる「複眼」を育て、現代人のアイデンティティの混乱や葛藤を解決する糸口を提供します。グローバル化が進む現在に有用な学問なのです。

用語解説

*1:「比較文化研究」:国境を越えて(クロス・エリア)、また、ジャンルも超えて(クロス・ジャンル)、文化の影響・受容・伝播を研究することです。
*2:「美術」は、日本で作られた翻訳造語です。中国由来の漢字ではありません。
*3:2019年10月に香港で行われた香港サザビーズでは常玉の裸婦画は28億で落札されました。

Profile

共通教育センター外国語教育部門

講師

二村 淳子

東京大学大学院 総合文化研究科 博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。2016年に鹿児島大学着任。2019年より国際日本文化研究センター、客員准教授。代表単著に、『常玉 :モンパルナスの華人画家』(亜紀書房、2018年)、『クスクスの謎』(平凡社、2012年)、『フレンチ上海』(平凡社、2006年)など。翻訳書には『エロティック・ジャポン』(アニエス・ジアール 河出書房新社、2010年)、『ジャスト・キッズ』(パティ・スミス、河出書房新社、2012年)ほか。

学生(受験生)へのメッセージ

 「藝は身を助く」と言いますが、私に言わせれば、「語学は身を助く」です。もしも専攻を選ぶのに迷ったら、まずは語学力をしっかり固めることからはじめてみましょう。語学力は、情報収集能力やコミュニケーション能力、論理的な能力を与えてくれるだけでなく、視野を広げ、世界観を変えてくれます。複眼ができると、今まで見えなかったことがたくさん見えてくるようになりますよ。私の場合、海外生活が長かった経験(前職は雑誌の記者でした)が、文化を見極める力に繋がっています。

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