専門性を現場でいかすために

今は多くの小中学校や高校に、心の専門家として「スクールカウンセラー」が配置されており、以前に比べると多くの人にスクールカウンセラーという仕事を知ってもらえるようになりました。みなさんはスクールカウンセラーの仕事というと、何を想像するでしょうか?
もちろん、相談したい子どもがいればスクールカウンセラーは相談に応じます。しかし、年齢が低いとまだ言葉での相談が難しかったり、中高生でも人目が気になったりするなどの理由から、子どもだけでスクールカウンセラーへ相談にやってくることはあまりありません。実際にはいつもと子どもの様子が違うのではないかと心配する家族や学校の先生が気づいて、先にスクールカウンセラーへ話にやってきて、その話に応じるという事が子どもとの相談や支援の始まりになっています。
そのため、子どもと1対1で相談したり、何かしらの心理検査をしたりすることも、心理職の専門性が求められるとても大切な仕事ですが、その専門性を現場で発揮するためには、まず子どもや学校の情報を家族や先生から集めながら関係を築くことから始める必要があります。こうした支援の土台となるような活動が、専門的な支援の土台や柱として重要ということが、次第に実践や研究を通してわかってきました。
いじめや不登校は個人だけの問題ではない

スクールカウンセラーが関わる問題というと、いじめや不登校を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際、日本のスクールカウンセラー制度はいじめ事件がきっかけになって始まりました。それ以降、スクールカウンセラーは学校のいじめや不登校への対応をサポートしてきましたが、スクールカウンセラーの面談をはじめとする個別の対応やケアだけでは、限界のあることもわかってきています。個人の問題だけでなく、受け皿や居場所となる学級や学校の状態や雰囲気が大きく影響するのです。
そのため私は特に小学校で、学級が荒れることによる影響や、荒れた学級を回復させるための支援を実際に行いながら研究をしています。その時に大事になってくるのが、個人と集団の両方を見据えた支援です。被害者、加害者、クラスで暴れる子など、個人だけに介入するとそれを不満に思う子が少なからず出てきて、クラスという集団の場がかえって荒れるリスクのあることが知られています。集団で共有できる目標を設定しながら、その中でがんばっている一人一人を応援するという支援を行っています。