鹿児島大学 鹿児島大学高等教育研究開発センター

専任教員ブログ

専任教員ブログ

プレゼンテーションの原稿

 

 あけましておめでとうございます。伊藤です。本年もよろしくお願いします。

 

 本学では5年前に、全学必修科目として「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」を開設しました。主な目的は、基本的なアカデミック・スキルと大学での学び方の習得、そして、関心の異なる他者との協働する力を付けることという3つです。学生たちは、前期のⅠと後期のⅡを通じて、15週をかけてレポート作成を行うことやグループでのディスカッションに基づくプレゼンテーションに取り組みます。

 

 私自身はもともと学生の書く力の育成に強い関心を持っています。博士論文のテーマも大学生のアカデミック・ライティング力育成でした。ですから、「初年次セミナー」についても、どちらかと言えばレポート作成の方に意識が向きます。
 しかし、5年間継続して取り組んできたこともあり、プレゼンテーションに対しても気になるところがいろいろと出てきました。

 

 最近最も気になっているのは、学生が皆原稿を作成することです。大学以前の段階でそうした指導を受けているのでしょうか。あまりにも当たり前に原稿を作成し、それを読み上げるので、学会発表前でも原稿など作った経験のない私は、5年経っても未だに戸惑います。
 プレゼンテーションは、話し手と聴衆とのコミュニケーションの場だと考えています。そのような場で、原稿を読み上げるというのにはどうにも違和感があります。どうしても原稿を読んでいるわけですから「ああ、読んでいるな」と感じられる話し方になります。抑揚が乏しく、まさしく棒読みのプレゼンテーションをいくつも目にすることになるのです。

 

 聴衆にうまく伝える、理解や納得が得られるようにするということを考えた場合には、原稿を読み上げるのは最適とは思えません。だからといって、さすがに学生に原稿は作るなというつもりもありません。ただ、そこから徐々に脱却していった方が良いのではないかとは伝えるようにしています。まだ1年生の学生たちには、今後もプレゼンテーションの機会が多々あるでしょう。その際に全て発表用のスライドも読み上げる原稿を作れるのか、棒読みにならないような話し方ができるのかと考えれば、今から少しずつでも脱却して自分の言葉で話せるようになっておいた方が良いと思うからです。
 ほとんどの学生たちは、原稿を読み上げれば抑揚がないものになることは理解しています。ただ、原稿なしにプレゼンテーションを行うことへの不安があるのか、あるいは原稿を読み上げるのがプレゼンテーションというものだと思い込んでいるのかはわかりませんが、そこから離れるのは容易ではないのでしょう。それでも、説得力のある話し方を身に付けようと思えば、原稿に頼らず話せるようになることはとても重要なのではないでしょうか。

 

 今年度後期の「初年次セミナーⅡ」では、年内に中間プレゼンテーションを行い、学生同士で様々なコメントを付け合ってもらいました。その中には、抑揚のなさを指摘する声も多数見受けられました。自分自身の反省点としてそのことを挙げている学生も何人もいました。同級生からのコメントの方が教員からのそれより響くこともあると思います。
 そうした様々なコメントを踏まえて改善を図ったうえで、今月末には最終プレゼンテーションに臨みます。この機会に、「プレゼンテーションにふさわしい話し方」を身に付ける第一歩として、原稿に頼り切らずに話すことに挑戦してくれることを願っています。

 

その他一覧へ