鹿児島大学 鹿児島大学高等教育研究開発センター

専任教員ブログ

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2度の育児休業を経験して

 中里です。

 

 昨年、1年間の育児休業を取得し、今年1月に復職しました。

 

 育児休業の取得は、今回が2度目になります。1度目は5年前。娘を出産し、当時同居していた夫と慣れない育児に奮闘しました。生後数ヶ月たち、娘が夜まとまって寝てくれるようになった頃から、娘の就寝後の時間帯を活用しながら、研究活動を再開させました。といっても、定期的に送られてくる学術雑誌をぼーっと眺めるだけの日が殆どではありましたが、110分でも研究の世界に継続して触れたことは、休業を終えて仕事に戻る際の頭のリハビリに役立ったように記憶しています。

 

 2度目の取得である今回は、里帰り先で息子を出産後、鹿児島に戻り娘と息子と私の三人で育休生活をスタートさせました。前回の育休とは異なり、夫は海外単身赴任中、いわゆるワンオペと呼ばれる形での育児生活です。夫不在で何かと不安を感じることもありましたが、初めての育児ではないし、なんとかなるだろうと甘く考えていました。1度目の育休同様、子が寝静まった夜に、自分の時間を確保し有効活用できればと計画していました。が、その計画はすぐに頓挫することになりました。

 

 母と子二人の生活をスタートさせ、最初に苦労したのは、上の娘の精神面でのケアでした。弟が生まれて、生活環境ががらりと変わり、言葉にできないストレスもかなりあったのだろうと思います。年齢特有の反抗期も重なりました。ちょっとしたわがままから始まり、自分の要求を聞き入れてもらえないことで癇癪を起こす、泣き叫ぶ、そして手当たり次第にものを投げつける。なだめてもなだめても一向に落ち着く気配がない。首のすわらない下の子を両手で抱えながらただただ呆然とするしかなく、人生で最も長く感じた時間でもありました。

 

 ある先輩研究者からは「子どもが複数いたら、子ども同士で遊ぶようになるから、育児は楽になる」と聞いていました。しかしながら当時の自分の状況には当てはまりませんでした。下の子の昼夜の区別のない世話に加えて、ある程度大きくなった娘に寄り添う生活は、母親としての大きな責務とはいえ、かなり苦労しました。また、生活リズムの異なる子ども二人が揃って寝てくれる限られた時間に、溜まった家事を片付けるしかありませんでした。こうした経緯もあり、2度目の育児休業では、研究活動も含め、自分の時間を確保することを諦めることにしました。

 

 「諦める」という選択は、個人的には、これまでの人生ではなるべく避けてきました。でも、育児を中心とした生活では、どうにもならないことだらけ。世の中には、仕事も育児も家事も、全力で頑張っているお母さんやお父さんがたくさんいて、私のように「諦める」親は少数かもしれません。でも、どう考えても、どうあがいても、どうにもならないことに多々直面しました。すごく悩みましたが、最終的には腹を括って、「諦める」ことを積極的に選択することにしました。自分の目標を達成するために戦略的に取り組むことが最も重要であるという価値観で動いてきた今までの自分にとって、「諦める」という手段を覚えたことは、今となっては大きな収穫の一つだったように思います。

 

 多くの諦めを受け入れた結果として、2度目の育児休業期間は子どもに100%集中して向き合えた時間となりました。子どもに多くの言葉を覚えてもらうために、ありとあらゆる絵本を読み聞かせました。たくさんの童謡も覚え、歌って聞かせました。仰向けの状態からなかなか動き出そうとしなかった息子に、動き方を教えるべく、1日のほとんどをハイハイで過ごすこともありました。35歳の膝にはなかなか辛い修行のようにも感じましたが、母による厳しいトレーニングのおかげか、あんなに動作が鈍かった息子も、今では元気に走り回っています。

 

 復職して2ヶ月。休業中はひらがなばかりの絵本に囲まれた生活であったため、学術論文はもちろん、漢字に触れることすらありませんでした。復職直後は、職場の事務的なメールを読みこなすことさえ労力をかけなければなりませんでした。メールの返信を書くにも一苦労。さらにルーテインであったデータ分析に関しても、必要な勘を未だ取り戻せていません。オンライン授業、教育DX、私にとってはまだ慣れない言葉です。リハビリにまだまだ時間がかかりそうです。慢性的な睡眠不足で、体力が落ち、体調を崩すこともしばしばあります。

 

 仕事を終え、帰宅後は子どもたちの食事やお風呂の世話、寝かしつけ。二人の子どもが寝た後にようやく、嵐が去ったような散らかり放題の部屋を片付け、家事をこなす日々。時間に追われることは日常茶飯事。それでも最近、姉弟で仲良く遊べるようになるなど、生活に変化が出てきました。弟がいる生活に慣れた上の娘が、今では家事を率先して手伝うなど、慌ただしい生活を送る上での貴重な戦力となっています。まだ始まったばかりの新しい生活ですが、家族みんなで力を合わせて充実させたいと思います。

 

 最後に、二度の育児休業は、所属する高等教育研究開発センターの先生方と関係スタッフの皆さんの温かいご理解のもと取得できました。育休取得にあたり、多大な配慮をいただき、職場の皆さんには今でも頭が上がりません。育児休業の取得は働く者の権利の一つとして認められてはいるものの、やはり職場の皆さんの温かい受け入れのもとで取得できることは忘れてはなりません。仕事を早く通常モードに戻し、少しずつ恩返ししたいと考えています。

 

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