鹿児島大学 鹿児島大学高等教育研究開発センター

専任教員ブログ

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センター長あいさつ

センター長の伊藤です。センター長就任、そしてHP開設から随分時間が経過してしまいましたが、改めましてよろしくお願いします。
 
 さて、今年度は新型コロナウィルス感染症の影響で、本学では全面的に遠隔授業を実施しています。現在は感染状況がある程度落ち着いたことを受けて一部で対面授業が開始されているものの、まだ大半は遠隔授業です。遠隔授業については、その必要性が指摘されたことはあったものの、喫緊の課題とは認識されてきませんでした。それが今回、感染症対策という観点から否応なく取り組まなければならない緊急の課題となったといえるでしょう。
 実施から2か月以上が経過し、学生も教員もそれなりに遠隔授業に慣れてきたものの、遠隔授業を全面的に実施しているがゆえの問題も明らかになってきています。そのことをはっきりと示したのが、本学において1年生を対象に実施したアンケートの結果です。もちろん、良かったことについても挙げてもらったのですが、本学の教育改善に貢献しなければならない立場としては、学生が困っていることの方に圧倒的に関心があります。そこで、以下では特にこの点について取り上げたいと思います。
 
 学生から挙げられた不安や困っていることとして最も多かったのは、課題の多さでした。学生の学修の進捗状況や定着度を把握するために、教員は様々な課題を出します。ひとつひとつは難しいわけでも非常に骨の折れるものでもないとしても、複数の授業を同時期に受けている学生からすれば、積み重なって多くの量になるということは充分あり得ます。
 また、遠隔授業特有の問題として、学生は主に自宅で受講しているため、わからないところがあっても友だちに尋ねることができず、その場で解決することが難しい状況にあります。そのため、わからない点があるとその解決に時間がかかることになってしまいます。
 さらに、Zoom等を用いたリアルタイム型授業とYouTube等を用いたオンデマンド型授業を併用している場合、対面授業であれば1時間半で行っていることにそれ以上の時間を使わなければならなくなる場合も十分あり得ます。リアルタイム授業が1時間半行われる場合、教材の視聴時間は授業時間外の学修となります。また、教材の視聴は、内容が難しかったり音声が途切れてしまったりした場合など、繰り返し視聴することも珍しくはないでしょう。そうした場合、学修時間はどんどん長くなっていきます。その上に課題に取り組まなければならなくなるため、学生の負担感は非常に高くなるのです。
 
 単位の質保証という観点からすれば、2単位の講義科目の場合、標準的な学力の学生が授業時間の2倍の授業時間外学習を行うことで十分な学修成果を挙げることができるよう授業を設計することとされていますから、授業時間が2時間とすれば、授業時間外学習と合わせて6時間以内に収まれば問題ないという考え方も成り立ちます。しかし、学生が受講している科目数次第では、1つの科目に6時間費やしていては睡眠時間も十分に取れないという事態はあり得るのです。
 高等教育機関として単位の質を保証すること、学生が十分な学修成果を着実にあげられるような教育を行うことは必要不可欠です。しかし、そのために必要なことは提供する教材の充実や提出された課題を通じての成果の評価だけではありません。今回の調査結果を通じて得られた学生の実情を真摯に受け止め、学生が意欲的・能動的に学んでいけるような環境整備を進める必要があります。そのためには、個々の授業ごとの取り組みだけでは不十分です。学部全体、あるいは大学全体として学生の日常生活が負荷の重すぎる状態に陥らないよう配慮が必要です。また、授業以外の部分で以下に学生生活を支えるかという視点も大切にすべきでしょう。おそらく今後もある程度は続くことになると思われる遠隔授業をより良いものにすると同時に、遠隔授業の実施を前提としつつ学生生活を充実させる施策についてこれからも考え、提案していければと思います。

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