専任教員ブログ
【鹿児島大学の遠隔授業シリーズ】授業準備の大切さ
全10回の連続FDセミナーが本日5回目を迎えました。これまでにお話いただいた金子先生、鄭先生、根路銘先生、的場先生、そして本日の石走先生、貴重なお話をありがとうございました。
まだ総括には早いですが、5人の先生方のお話を聴いて感じたことをまとめておきたいと思います。共通するのは、「学生のためにどのような運営を行うべきか」「どのようにすれば学生にとってわかりやすいか」「どうサポートすれば学生が慣れない遠隔授業を不安なく、また楽しく受けられるか」という問いから授業が設計されている点だと感じました。それぞれ実際に用いられた方法は異なるのですが、常に学生を中心に据えた設計がなされており、それが学生からの高評価につながっていたのだと思います。
合わせて感じたのは、遠隔授業だからといってZoomや本学でいえばmanabaのような学習管理システムの活用に長けていること、技術力の高さというのは必須ではないということです。これまで実施したセミナーでは、「自分はそうしたツールには全く詳しくない!」と断言される先生が5名中3名いらっしゃいました。Zoomを見たことも聴いたこともなかった、本学で2017年度から運用しているmanabaでさえほとんど使ったことがなかったと言われた先生もいらっしゃいました。
大切なのは技術力ではなく、どれだけ授業の準備に注力して臨むかということに尽きるのかもしれません。古い研究ですが、Feldmanによれば、学習成果に影響を与える要素を30件以上にのぼる実証研究から得られた相関係数の平均値から明らかにしています。それによれば、最も強い相関がみられたのは「授業の準備と授業の設計」でした。他にも「説明の明確さと理解しやすさ」「授業目標に沿った授業」など重要な要素はいくつもありますが、今回のセミナーを通じて改めてこのことを実感しました。
もちろん、技術力には意味がないということでは決してありません。教員が明らかに操作に不慣れで授業がうまく進まない場合や、そうしたツールが苦手だからという理由で、manabaに資料は掲載されているもののそれ以上の説明も受けられず、質問対応も行われない授業では、学生は十分な成果を得られないでしょうし、授業に対する不満も募るでしょう。一定程度のスキルは必要です。当センターがサポートしなければならないのはこうした部分だとも認識しています。
その一方、ツールに対する習熟度が過剰に遠隔授業への不安を駆り立ててしまうのは、あまりにももったいないのではないでしょうか。私自身、決してそうしたものの扱いに長けているわけではなく、どちらかといえば必要最低限で済ませたい方です。それでも、おそらく今後も一定程度の割合で継続して取り組んでいくことになる遠隔授業の成果をより高めるために、一教員としても、また本学の教育改善への寄与をミッションとするセンターの一員としても努力していきたいと思います。
【参考文献】
Feldman,K.(1997)”Identifying Exemplary Taechers and Teaching:Evidence from Student Ratings”in Perry,P.and Smart,J.(eds.),Effective Teaching in Higher Education:Research and Practice,Agathon Press