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専任教員ブログ

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遠隔授業に関するFD連続セミナーが終了しました

 

伊藤です。

 

 全10回の連続FDセミナーが本日をもって終了しました。ご登壇いただいた10人の先生方におかれましては、お忙しいところをご対応いただき、誠にありがとうございました。また、参加いただいた皆さまにも感謝申し上げます。

 

 今回のセミナーは、基本的に学生からの評価に基づいて講師をお願いしました。ただし、「楽しかったから」「いろいろな人の話が聴けたから」といったような声は避け、遠隔授業の具体的な運営方法や学生に対する配慮の仕方などに関するコメントが多く挙げられていた方にお願いするよう意識しました。例えば、「オンデマンド教材が準備されていたのでわからないところを繰り返し勉強することができた」「ワークシートが準備されていたので、流れに沿って学ぶことができた」といったコメントが挙げられます。そのほかにも、授業開始前からBGMを流しておくことによって音声確認をしていたり、目の疲労を考慮して途中に休憩時間を入れていたりといった学生への配慮に関する工夫にも着目しました。

 

 FDという概念については、授業改善のことと非常に狭くとらえられる場合が多く見られます。しかし、実際はそのような個別具体的なことにとどまるものではないと思います。高等教育機関におけるFDとは、学生が高等教育修了者にふさわしい能力を身に付けられるだけの適切な教育ができるようにするための試みの総称であり、授業改善はその中のほんの一部にすぎません。カリキュラム全体を通じて学生の能力育成を図る以上、個々の授業においても十分な能力育成が必要であり、そのためには教員の資質・能力の向上が求められます。そうした資質・能力の向上の結果として授業がより良いものとなるわけです。

全ての授業がより良いものへの発展したとしても、おそらく学生の能力向上が完璧に図られるわけではないでしょう。学生生活の中では、授業を受けたり課題に取り組んだりしている時間は一部を占めているにすぎず、それ以外の様々な活動に費やしている時間の影響も非常に大きいからです。

大学あるいは教員が統制し切ることのできない大学生に高等教育修了者にふさわしい能力を身に付けさせるのは、決して容易ではありません。それでも高等教育機関として大学はそのミッションに取り組む必要があります。そのミッションをしっかり果たすために大学が大学として取り組む教育改善がFDなのではないでしょうか。

 

 今回、「連続FDセミナー」と銘打って開催したこの企画において、お話いただいたのは遠隔授業を行うに当たって実際に行われた工夫やその背景にある考えでした。それらは非常に個別具体的な話です。

ですが、10人の先生方のお話からは、いくつかの共通する要素が見出されました。

1つには、授業準備にとても熱心に取り組まれているということです。事前に学生の状況についてネットワーク環境から学習状況に至るまで幅広く考えたうえで授業の進め方をイメージし、教材作成に臨まれていました。リアルタイム配信授業かオンデマンド配信授業かによって準備の内容は異なりますが、いずれの場合であってもできるだけのことをしっかりしつくしたうえで授業時間を迎えられるよう注力されている点が印象的でした。

またもう1つ、学生に対してとても真摯に向き合い、学生からの質問や問い合わせ、また、提出物に対して丁寧に対応されている点についても共通していたと思います。100名あるいは150名を超える授業でも毎回全ての学生にフィードバックをされていた方もおられました。全員にコメントしていないからといって決して手抜きではなく、次回授業時に多様な学生からのコメントを整理したうえで一括してフィードバックするなど、授業の内容や学生数に応じたやり方を採用されていたと思います。学生にとっては、その後の学習へのモチベーションになったでしょうし、「この先生はしっかり自分のことを見てくれている」という安心感や信頼感にもつながったのではないでしょうか。

 

 連続FDセミナーについてはひとまずこれで終了となりますが、遠隔授業は来年度以降も継続し実施していくことになります。今後は、「とにかくできるか?」という段階から、「どうやって対面授業と遠隔授業を組み合わせるか」「どうやって遠隔授業の質をより高めていくか」という段階へと課題意識が移っていくでしょう。これを鹿児島大学全体として、また、共通教育や各学部の専門教育においてどのようにこの課題に向き合い、教育の質を高め、学生の学習成果を高めていくかが問われることになります。今回の企画が、そうした今後を考えるうえでの一助になればと願っています。

 

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