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専任教員ブログ

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【鹿児島大学の遠隔授業シリーズ】遠隔授業の難しさを実感するとき

 

 伊藤です。

 

 実際に経験してみて、様々な点で遠隔授業ならではの難しさを感じています。今回は、特にグループ・ディスカッションについて取り上げます。

 

 本学で多くの教員が用いているZoomの場合、ブレイクアウト・セッションという機能があります。学生をグループに分けることができ、グループ・ディスカッションを行う際にはこの機能を使います。ランダムでのグループ作成も可能ですし、あらかじめ指定したグループに振り分けることも可能です。また、ホストの権限を持っていればグループを渡り歩くことも可能なので、教員がグループの様子を見て回ることもできます。Zoomはバージョンアップも進んでいるため、現在は設定次第で、ホスト以外もグループを選択できるようになっています。そう考えると、教室で行っていたことの多くが実現可能と言えます。

 

 その一方、遠隔ならではの難しさを感じることもやはりあります。

 

 私が感じている主な課題は2つあり、そのうち1つは全体が俯瞰的に見えないことです。グループの様子を一括してみることができないので、とにかくグループを渡り歩かなければ様子がわかりません。教室の場合は、「あのグループは沈黙が続いているな」「あのグループは1人だけが話す状態に陥っているな」などというのを確認し、指導に入った方が良いと思うグループに関与するようにしていました。

 しかし、ブレイクアウト・セッションの場合は全体を見ることができないため、とにかくグループに行って見て様子を把握するところから始める必要があるのです。

 学生の側からすれば、自分たちで活発に話し合っていた場合でも、急に教員が来れば空気が変わり、黙ってしまうこともあります。それまで特に問題なく話し合えているグループであったとすればなおさら、タイミング悪く入ってしまったことに申し訳なさを感じてしまいます。

 

 もう1つは、学生のカメラの取り扱いです。必要以上にカメラオンを強制するべきではないと思います。しかし、だからといって常にカメラはオフでいいと考えられてしまうと、それはそれで問題があるのではないかと考えるようになりました。

 カメラオフが当たり前という意識で良いのかと感じるのは、やはりグループ・ディスカッションの場合です。顔も見えない相手と話し合うことが、果たして効果的にできるのかというと疑問を感じます。話し始めるタイミングを取ることさえ難しくなるでしょうし、相手が本当に向こう側にいるのかさえ疑える状況だからです。ネットワーク環境の問題でカメラオンにできない場合や声を出すのが難しい場合もあり得ます。ですが、そうした状況であることは、本人が説明してくれなければわかりません。そうした説明がないままでは、不要な不信感を招きかねず、グループの人間関係を悪化させてしまうのではないかとも懸念します。

 

 前者については、システムとして解決するのは難しいでしょう。こればかりは慣れるしかないのかなと今のところ考えています。そもそも教員が積極的に入るべきかどうかから考えた方が良いのかもしれません。私自身、担当する授業ではあまり積極的に入り込まず、学生たちの先輩でもある特任助手や学習アドバイザーに積極的に動いてもらうようにしています。教員の関わり方を見直すきっかけになるのであれば、それには意味があるでしょう。

 

 後者については、学生を信用する以外にないのかもしれませんが、せめてグループ・ディスカッションの際にはカメラオンの方が良いのではないでしょうか。もちろん、事情がある場合は配慮が必要ですが、表情も重要なコミュニケーションの要素であり、それが見えない中では効果的な話し合いが難しいと思います。他者と話し合おうとすれば表情が見えることが必要であり、そのためには自分の表情も示す必要があるとの認識を持ってもらえればと考えています。

 

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