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専任教員ブログ

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【鹿児島大学の遠隔授業シリーズ】遠隔授業サポートチームの活動

 

 伊藤です。

 

 遠隔授業の全学的導入が決まった年度当初、私には遠隔授業の経験は一切ありませんでした。レポート提出や学生とのコミュニケーションに使える学習管理システムmanabaは利用していましたが、音声付きのスライド資料をつくったことも、Zoomを触ったこともありませんでした。

 その時点で私がとんでもなく「遅れた」教員だったかというと、決してそんなことはなかったのだろうと思います。先日まで実施していた連続FDセミナーでご登壇いただいた先生方からも同様の状態だったとの発言もありましたし、日本の大学教員の多くはそのような状態だったのでしょう。どの教員もそこからどうにかこうにかスキルを身に付け、現在に至っています。

 

 そうした教員の心もとない状態を支えてくれたのが、遠隔授業サポートチームです。本学では、不慣れな教員が多数いきなり遠隔授業に臨むことをふまえ、様々な形で支援体制を整えました。全教員にZoomの有料アカウントを提供することとしたのもその1つです。また、学習管理システムmanaba上に教員同士で情報交換のできるコースを作成し、スキルのある教員による情報提供や学び合い・支え合いの場を設けました。こうした支援のための仕組みの1つが遠隔授業サポートチームです。

 

 遠隔授業サポートチームは、当センターの森先生を事実上のリーダーとし、特任研究員や特任専門員の他、職員の方々によって運営されています。Zoom等のマニュアル作成や教材作成のための撮影補助、問い合わせ対応など、非常に多岐にわたる活動に取り組んでいます。12月となった現在は随分落ち着いてきましたが、4~6月頃はひっきりなしに問い合わせの電話が鳴り、1件終わるとそれを待っていたかのように次の電話が鳴る状態だったことを思い出します。私自身はその部屋で仕事をしていたわけではないので、実際にしんどい思いをしたわけでも何でもありませんが、遠隔授業サポートチームの皆さんはそのころ本当に大変だったことだろうと思います。

 

 本学に限らず、全学的に遠隔授業を導入している大学の多くがこうしたサポートのための組織を設けています。知識も経験もない中手探りで遠隔授業をしなければならない状況においては必須の組織だといえるでしょう。私たちのような高等教育研究・開発を学内で中心的に担う組織の他、情報関係の組織が役割を果たしている事例も多いと思いますし、両者の共同によって運営されている事例も見られます。いずれにせよ、教員がそれぞれすべて自力で何とかせよといわれてもかなり無理があり、それは結局のところ教員のスキルや意欲の差によって授業の質の差を大きくしてしまう結果を招くだけでしょう。担当する教員が誰であっても学生にとっては1つの授業であるという点では同じであり、最低限担保すべき質があるのではないでしょうか。そう考えた場合、突然遠隔授業を迫られてスキルに差があることは事実として認めたうえで、遠隔授業の質を保つために何をどうすれば良いかを考えることが必要です。サポート組織の設置は、そのための具体的な手立てのひとつといえると思います。

 

 先日行われた第2回FD・SD合同フォーラムでは、実際に業務に当たった特任研究員の松下さんに登壇してもらい、実態について話してもらいました。私も把握し切れていなかった様々な苦労を知ることができ、あらためて感謝するとともに、今後にこの経験を以下に引き継いでいくかを考える機会ともなりました。また、そのようなサポート組織の存在を知らなかったとの指摘もあり、情報周知の難しさについても改めて痛感しました。

 

 とにかく手探り状態で遠隔授業に臨んだ今年度と比べると、来年度以降は大きく状況が変わるでしょう。しかし、新たに入学する1年生にとっては不慣れなことだらけでしょうし、教員にとっても今後はより良い授業にするための工夫が迫られることになります。今年度とは異なる支援が必要になるものと予想します。この遠隔授業サポートチームが来年度以降どのような形になるかについては現在検討中ですが、本学における遠隔授業の質的向上のためのサポート組織として今後も一定の役割を果たしていく必要があるだろうと考えています。

 

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