鹿児島大学 鹿児島大学高等教育研究開発センター

専任教員ブログ

専任教員ブログ

ワクチン接種会場に大学を活用?

伊藤です。
 
 先週末、表題の報道がありました。大学関係者の1人としては、「まだ医療関係者や高齢者への接種も完了の見通しが立っていないのに、いつ、だれに対する接種の話なんだろう」というのが率直な疑問です。下の世代に対する接種に現実味が出てくれば、その会場として大学を使うというのもあり得ると思うのですが、現段階では何とも判断しかねるところです。
 
 対象者が誰なのかということが気になるのは、大学で日常を過ごしているのは高齢者ではないためです。仮に高齢者に対する接種会場として大学を活用という話になると、ある建物なりエリアなりをそのために空けなければならなくなるでしょう。接触場面はできるだけ回避する必要があるためです。その結果、本来そうした施設を活用できるはずの学生を排除しなければならなくなるのだとしたら、それはどうかと思います。
 医療関係者については、本学も附属病院を有していますので、そちらで摂取できればその方が良いのかもしれません。ただ、それにしても、そこで学ぶ学生やそこで働くいわゆる医療関係者ではない職員の取り扱いをどうするかがやはり問題になるでしょう。
 
 もう一つ気になるのは、ここで想定されている大学というのはどのような立地のところなのかということです。鹿児島大学は比較的交通の便の良い市街地にあります。ここ1年以上県内引きこもりの状態ですが、それ以前、学会等であちこちの大学に伺う機会がありました。その中で気が付いたのは、鹿児島大学はかなり便利なところにあるということでした。しかし、便利な大学ばかりであるはずもなく、最寄り駅からタクシーで30分といった大学もありますし、公共交通機関で行くことが非常に難しい場合もあります。だとすると、人が過剰に押し寄せることなく接種を行うための場として想定されている大学というのは、都市部の便利なところにある大学なのか、どちらかといえば僻地のそのエリアの拠点となるようなところの大学なのか、どちらなのでしょう。
 
 今すぐに実現に向けた動きが始まるわけではないのでしょうが、こんなニュースが出ると大学に籍を置く身としては気にせずにはいられません。それと同時に、学生が大学で学ぶ権利が侵害されることのないよう配慮してほしいと改めて思います。
 今年度は昨年度とは異なり、対面授業も一定程度実施されています。緊急事態宣言対象地域など、準備・計画はしていたものの対面授業ができなくなってしまった大学も数多くあるでしょう。それでも、全国的に見れば、少なくとも昨年度と比べれば学生がキャンパス内に出入りできるようになっていると思います。教室で授業を受け、部活動・サークル活動にも取り組める日常がかなり可能になっています。
本来当たり前にできるはずのこうした活動が、ワクチン接種のために制約を受けることにならないことを願うばかりです。
 
 
IMG_20210825_100835.jpg

つぶやき一覧へ