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専任教員ブログ

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大学入学共通テストの今後

伊藤です。
 
 有識者会議にて議論が行われていた2025年以降の大学入学共通テストについて、提言案が示されました。議論の焦点は以下の2つでした。
 
 1.英語民間試験の活用
 2.記述式問題の導入
 
 結論からいうと、どちらも実現は困難とのことで、どちらも実行には移されないでしょう。
 
 率直にいって、なぜ今頃こんな議論をしているのだろうと思わずにはいられません。
英語民間試験については、居住地域によって、また、家庭の経済状況によって事件可能性に差が生じることは明白でした。鹿児島県のように離島が多い地域の場合、1回の受験にかかる費用は受験料だけではありません。本人の努力とは全く異なる次元で差が付けられているわけです。大学入試センター試験の受験であっても全く同じ条件とは言い難い部分があったわけですが、そうした非合理的な差をさらに拡大させるような方針が望ましいなどと誰が言えるでしょうか。
記述式問題導入については、学生によるアルバイトにさせようとしていたことが発覚するなどして問題視されるようになりました。もちろん、受験生の人生を左右しなけない重要な試験の採点を学生アルバイトにさせることの是非は問題でしょう。
ただ、問題の本質は採点者の立場以上に、公平な採点が可能なのかどうかにあるのではないでしょうか。毎年50万人弱が受験する大規模試験です。記述式となれば、仮にルーブリックを作成して事前に評価基準を採点者全員で確認していたとしても、正誤判定のみの問題などと比べればどうしても時間はかかります。そのうえ、全員が最初から最後まで同じ基準で評価できることを保証することはできません。
 
教育再生実行会議で提言が行われてからこれまでの間振り回された中学生や高校生、各学校関係者、大学等は、この話をどんな思いで受け止めればよいのでしょうか。格差を拡大し、なおかつ公平性が担保できない入学者選抜が適切であるはずがありません。
現在の大学入試があらゆる面で適切だというつもりはありませんが、変えさえすればよいというものでもありません。今後も大学入試改革は進んでいくでしょうし、検討しなければならない論点は多々あります。そうした中でも、受験そのものについてもその採点についても、とにかく公平性が保たれるような改革にしていってほしいと思います。
 

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