鹿児島大学 鹿児島大学高等教育研究開発センター

専任教員ブログ

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新たなテキストを刊行しました

 伊藤です。

 先月、『ピア活動で身につけるアカデミック・スキル入門』を刊行しました。本学の全学必修科目「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」での使用を前提としたテキストとしては3冊目になります。1冊目は科目新設に合わせて、2冊目は1冊目で収録できなかったレポート作成に関する内容を追加して新版として、それぞれ刊行していました。今回は、科目新設から7年が経過し、その間の実績を踏まえた内容となっています。また、1冊目、2冊目と同様、本書にはワークシート集や授業運営の参考資料としての授業ガイドも作成しています。

伊藤奈賀子・河邊弘太郎・坂井美日編(2023)『ピア活動で身につけるアカデミック・スキル入門』有斐閣
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641184657

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3回連続で編者となりましたが、今回が最もしんどい作業でした。それは、当然といえば当然の話です。
 初回は、まだ授業が開設されていない中での原稿執筆・編集でしたので、全体としての統一を図るも何もありませんでした。とにかく指定のテーマに基づいて執筆者に原稿を書いていただき、それを集めるだけで精一杯だったので、編者ができることは非常に限られていました。
  しかし、今回は7年間の実績があります。授業運営をする中で気づいたことや「これはテキストに収録すべき!」という思いが執筆者それぞれにあるのです。結果として初校段階では統一感はあまりないものとなり、思いがあふれて分量も多めになっていました。これを内容的にすり合わせ、分量を削る作業のしんどさは想像以上でした。同じことはワークシート集と授業ガイドの編集にも当てはまりました。なおかつ、テキストとワークシート集、授業ガイドを一体的に編集・修正していかなければならなかったので、12月、1月辺りは記憶が曖昧です。4月の授業開始に何とか間に合い、有斐閣の編集担当の方にはただただ感謝です。

 この新刊を用いた「初年次セミナーⅠ」が始まって3週間が経過しました。テキストを編集したこととも関連して、科目の運営にも携わっています。科目新設以降しばらくその役目を担い、しばらくしてお役御免になったのですが、なぜかまた戻ってきているのは正直不思議です。ただし、現在のお役目も、当然のことながら産休・育休中はお休みしていました。
 産休・育休を経て復帰した際に驚いたのは、「扱うべきコンテンツが激増している!」ということでした。授業時間も単位数も変わっていないのに扱うべきコンテンツだけが増えているということは、ひとつひとつのコンテンツにかけられる時間や労力を減らさなければなりません。そのため、戻ってきてから見た「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」は、やること満載でとても忙しい科目になったと感じました。

 今回の「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」に限った話ではなく、教育については「これも教えるべき!」「これは重要だ!」ということで扱うべきコンテンツが増えていくことがよくあると思います。しかし、その際、使える時間は全く変わらない点が考慮されることはあまりありません。同じ時間でコンテンツが増えれば、ひとつひとつにかける時間を短くするか、以前からあるコンテンツのいずれかを削るしかなくなります。それでも、「これを削減して、その代わりにこれを追加すべき!」という提案がされる事例を見たことはありません。
 「これを扱うべき!」と主張する人は、もっぱら善意でそういうのだろうと思います。しかし、善意の提案であっても、それを引き受けて対処を迫られる側が非常に苦しい状況に追い込まれる場合もあるということを想像できないものでしょうか。本当にそれがその場において、その状況において適切なのか、慎重に考える必要があるのではないでしょうか。

 善意であってもそれを具現化する方法は1つではないはずです。最適な方法は何か、もう少し丁寧に考えてはもらえないものか。そんなことを、周囲から様々な要望を向けられることが非常に多い「初年次セミナーⅠ・Ⅱ」の運営に携わる人間は日々感じています。

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