専任教員ブログ
令和7年度第2回教学IR研修会を開催しました
伊藤です。
今年度2回目となる教学IR研修会を開催しました。ご参加いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。
今回の講師は、農学部の坂巻先生にお願いしました。前回は、教学IRだけではないものの、医学部および歯学部の教育の質保証や改善に主導的役割を果たすことをミッションとする組織である医歯学教育開発センターの横尾先生に講師をお願いしていました。今回は、そうした専門組織による取り組みではなく、専門組織があるわけでもなく、専従の教員がいるわけでもない学部の取り組みをご紹介いただきたいということで、坂巻先生にお願いするに至りました。快くお引き受けいただき、ありがとうございました。
専従の組織や教員がいない場合、どうしても業務にかかる時間および労力の負荷が問題になりますが、少なくとも今回お話いただいた内容の限りでは、そうした問題は生じていないようでした。おそらくこの背景として、学部長からの諮問内容が明確かつ限定的だったことがあると思います。「とにかくデータから何か探り出してほしい」というような話だと、ありとあらゆるデータを見なければならなくなります。それは、教学IR専従ではない教員が片手間でやるには無理があります。どのようなデータを見ればよいか、何を答申すればよいかがはっきりとしていれば、比較的小さな負荷で取り組むことが可能だということが示されたことには大きな意味があると思います。教学IRの拡充に向けて当センターでは、「お題とデータさえいただければ分析はします」と常々言い続けていますが、結局のところ、この2点が明確になっていれば、教学IRの活動というのは実現可能だということを示しているといえます。
一方で課題となるのが、分析結果を踏まえての改善に向けた議論をどこでどう行うかです。もともと教学IRは秘匿性の高いデータを扱うものです。そのため、データをそのまま俎上に載せて議論するのは困難です。分析結果だけでも公表が難しい場合もあり得ます。となると、果たして分析結果を踏まえた議論は誰がどこでどう行えばよいかという問題について考えざるを得ません。
今回の農学部の実践については、学部長からの依頼に応えるものでしたので、分析結果を学部長に示せばそれで良いという考え方もあると思います。しかし、カリキュラムを担う教員が学部長だけでないのは明らかであり、学部教育を担う教員団として自学部の学生がどのような状況にあり、どのような傾向にあるかを把握しておくことは、日ごろの教育活動をより良いものにしていくために非常に重要なはずです。この情報共有、そして分析結果に基づく改善に向けた議論をうまく学部の活動の中に位置づけることができれば、教学IRに期待されているデータに基づく教育改善の実現が可能になるのではないかと思います。
なお、最も印象的だったのは、やっぱり大事なのは人間関係ですよね、という点でした。今回、坂巻先生にお願いしたのは、学部レベルで教学IRを実践されているということはもちろんですし、以前から存じ上げている方だということもありますが、「坂巻先生なら確実に確実なお話をしてくださる」という信頼感があったからです。そういう信頼感の持てる関係を日ごろから築いておくことは大切ですよね。私は気が付かないことが多々あり、無意識のうちにやらかしてしまっている危険性があると自覚しているので、常に自分を顧みながら仕事に向き合いたいと思います。

