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平成26年度前期「授業改善メモ」のまとめ

【授業改善に向けての試みや工夫】(文責:工学部 本間俊雄)

 各教員から様々な試み・工夫が挙げられた。授業科目によりそれらの試み・工夫には分野独自の内容がみられる。しかし、ここでは以下の3の観点から、授業科目による独自性を排した共通項目に絞りまとめることにする。ただし、3つの項目は、便宜的に分けたものであって、互いに関連し、独立なものではない。
  1. 学生の興味を喚起させる試み・工夫
  2. 個々の学生に対応した試みや工夫
  3. 授業をコントロールする試みや工夫
 なお、3つに分類できないものは、4. その他として扱う。また、「板書を工夫する」、「レポートを毎回課す」、「小テストを毎回課す」、「独自の資料を配布する」などの普段の授業で実施されるべき内容やそれらに対応する一般的に考えられるものは、記載を省略した。

1.学生に授業への興味を持たせ、参加を促すための試みや工夫

 学生の興味を喚起させるには、如何にモチベーションの低い学生に対して、授業に集中させるかが問題になる。これに対しては、「文化的な話題を取り入れる」、「ゲームや文化の紹介等を導入する」などの授業に関連する話題の挿入、あるいは「当該トピックに関連するDVDを視聴する」、「DVDをテキストにする」、「CD、DVDという視聴覚機材を使用」などと映像や音を見聞きさせることで、勉学意欲を向上させる工夫が多かった。映像の視聴は、単に興味を喚起させるためだけではなく、「具体的イメージを持った学習」や「理解を深めるために」にも利用されている。英語授業で、「毎回テキストに入る前に、簡単な日常表現を課題に指定したスキット(創作から実演まで)とスピーチ(質疑応答まで)に取り組んだ。」との学生に緊張感を持たせた工夫もある。
 教科目にもよるものの、受講生が集中できる快適な学習環境(授業に参加し易い雰囲気)の向上を図るためには、「使う教材を選んでもらい、さらにそのどのユニットを勉強したいか選んでもらった。」、「グループ・ディスカッションを取り入れて、考える作業が楽しくなるようにした。グロープ内で適切なピア・サポートが見られた。」、「最新の、かつ生徒が興味をひかれるような実際に日常で使っている内容の資料を用いるよう常に考えている。」などの報告もある。
 英語の授業で既習事項が身についているかの確認では、「2~5名(5~10数組)を指名し、会話、寸劇を試みている。」あるいは、「世界各国からきた留学生の協力の下、多様性のある英語にも慣れるとともに、英語で自由に自分の意見を表現できるように、できるだけQ&Aの時間をとれるようにしている。」との実践に即した試みもあった。
 興味を喚起させることではないが、「出席取りを授業の最初と中間に分けて行い(学生の眠気を取るため)、その中間での出席取りの際に、授業前半のポイントについて、パワーポイントで問題、そして解答を提示し、学生の学習効果が高まるよう努力している。」との試みもある。

2.個々の学生に対応した試み・工夫

 通常、講義であると1対1の対応が難しい。この困難を克服する試みに、「毎回学生のライティングを添削し、コメントを付け返却することで個々の改善を図る。」、「クリップボードに小さな紙を挟んで巡回し、個別の対応の折に、その小さな紙に走り書きメモ、ポイントなどを手短に書いて渡すなど、個々の学生のかかえる問題点に対応した」、「テキストの練習問題は毎週自宅学習をさせ、回答を配布して自己採点をして提出させている。自宅学習で理解できなかった点はE メールまたは授業後に尋ねるようにさせている。」、「受講生全員に対し、Moodle を通じ、各講義に対し、ミニッツレポート(約500 字)及び、復習確認の2種類のレポートの提出義務を課す。ミニッツレポートに関しては、各人のレポートに対し、担当教員からのコメント(100 字から500 字程度内容によって異なる)をつけ、全てのレポート(名前は削除)と担当教員のコメントを、Moodle を通じて受講者全員が閲覧できるようにしている。更に、レポートを読んで、各人へのコメントの中に示したキーワードを提出させている(復習確認)。」、「講義中に記入させるシャトルカードで、次回の講義時間にピックアップした意見紹介や質問への回答などを行うことにより、意見の共有や自己の思考の発展など、受講学生の満足感にもつながっていたようである。」、「ミニッツペーパーを取り入れ、講義で大切だと思ったことや質問を記入させており、共通するような大事な質問については、次回の講義の最初に答えるようにしている。」との報告があり、教員への負荷が生じる。
 教員の過度な負荷が生じない手順とした工夫には、「3名ずつのグループを作り、テーマについてや情報交換、また相互の進捗状況の確認やレポートのチェックなどをディスカッションの形でさせている。」との事例もある。
 Eメールを用いた質問の受付を明記した報告も幾つかあったが、学生が質問させる雰囲気を作ることの方が難しそうである。
 授業時間内の個々への対応では、「毎回、黒板に答えを書かせ、学生の文章を添削した。
また、何パターンか解答が考えられる場合には、そのバリエーションも提示した。」がある。しかし、ここまでが限度のようである。
 面白い工夫としては、「期末試験の際に手書きのノートもしくはメモについて持ち込み可としている。試験対策になるようノートやメモを作成することが授業の振り返りにつながれば良いと考えている。」があり、コピペ世代やコピー機が安価で利用できる現状では、勉強させるのに良い手かもしれない。

3.授業をコントロールする試み・工夫

 授業の進行に関する試みとしては、「活動する時間を多くできるように、ペアワーク、グループワークなどを取り入れた。」、「1回の授業に新しい学習項目を2つまで抑える等、進度のコントロールをする。」、「効率を上げるために、単語等の解説は前もって配布したプリントにて板書の代用をしている。」、「情報端末室にてMoodleを使い、授業を行った。また、グループによる発表やプレゼンの機会も多く与え、知識の蓄積のみに終止することがないように授業を行った。」、「教科書と連動したe-learning教材を課題として毎週行わせた。」等がある。面白い試みとして、「毎時間前回の授業の理解度をはかるための小テストを実施し、授業時間内にTAが採点、授業の終わりには返却している。」があり、学習効果が高いように思われるが、その分TAの負担が増す。

4.その他

 科研に関連する以下の記載があった。
  • カリキュラム理論では、社会構築主義、それと連動し、英語教授法では、communicative approachの時代からmultiple literacy へとグローバル化により、急速にシフトしている。 科研との関係もあり、この領域の理論・実践面の検証と実践を積み上げている。
  • 科研(前回採択=大学英語カリキュラムの評価方法の確立関連)(今回=アクティブラーニング介入による自律学習構築へのカリキュラムデザインのあり方)と照応しながら、授業改革に従事。 協同学習と教員の支援scaffoldingについて、より精緻なアプローチを構築し、授業実践に応用し、検証している。

【授業改善に関連した意見・要望等】(文責:共同獣医学部 松尾智英)

 授業改善に関連した意見・要望等に記されていた内容について、前年度に倣って下記の5項目に分類することにした。分類が適切でないものが含まれるかもしれないがご容赦頂きたい。また、類似の記述はまとめたが、意見・要望については文責者が簡略化すべきではないと判断したものについてはそのまま記載した。

1.学生アンケートと授業改善メモに関して

  • 中間アンケートはよいと思う。その時点での学生の反応が分かる。
  • 自分の授業を振り返る機会になると思う。
  • 中間アンケートには、自己の弱点、教えてほしいところ、要望等を素直に書かせて、それらに基づいて、授業の修正をするようにしている。
  • 学生との意見交換が必要と感じているので、中間アンケートは役立っている。
  • 質問Q2-Q15(14項目)のうち、能動学修(アクティブラーニング)に係る、学習者の自己評価=Q10の1つのみ。他=教員&授業評価。明らかに学習者の自律性 Learner autonomy と自己調整学習self-regulated learning のパフォーマンスはどうであったか、自己検証させる情報(質問)が足りない。これでは自己省察(反省的実践家)=アクティブラーニングの基底部分を育成することができない。
  • 毎回、このアンケート自体に根本的な疑問をもっている。手抜きの授業を教員にさせないために、一定程度の緊張感を与えるには良いと思う。だが、(中略)教員が真面目にやっても、難し過ぎて満足度の低いこともあれば、教員が手抜きで、DVD再生と精神論だけでも、全く中身がない講義に高評価をすることもある。
  • 学生が喜ぶ講義と教育機関として施すべき教育は異なるものであると思う。安易にアンケート結果にひきずられるのではなく、今後も教育者としての良心に基づいた教育をしてゆきたい。
  • 学生の評価が高い講義が良い講義な訳ではない。このようなアンケートなどを推し進めれば、教員は自衛手段として学生に媚びる講義をするようになるだろう。

2.組織的取組みによる教育改善の提案

  • 平成25年度に実施した共通教育改革については大変結構と思う。長期にわたってみると、授業の担当者が換わり、新しい授業が開設されていく。この過程で共通教育の目標や位置づけが少しずつですが変わってくる。それをこのような形で理念も実態も再検討され前進されるのは良いことだと考える。
  • 初修外国語の位置づけについて、①実際に使える②日本とは異なる発想法、文化等を知る。①②両立が理想であるがなかなか難しい。どこに重点を置くかでクラスの規模も異なると思う。①に重点を置くなら、可能な限り少人数で、②ならそれなりの人数でも構わない、など。
  • 都合の良い仮定だけで組み立てた理論で「改革」を行っても、実際におきることは理論通りとは限らない。結果まったくの逆効果となることもしばしばある。(中略)本学における FD のとりくみの必要性は理解するし勿論協力もするが、(たとえばアンケート結果の用い方等を含めさまざまな面において)今後も充分慎重かつ抑制的であって頂きたいと思う。
  • 科学英語(理)で扱った内容を何故大学に入学してからすぐに教授されなかったのか。そのために「学習ガイド」とか「生活ガイド」みたいなものを作成したり講習会を開いたりするのが適切な対応かと思う。
  • 本気で英語運用能力を高めるためには、集中的に学習できるような時間割・語学研修の設定など、語学教育の抜本的な改革が必要であろう。
  • 学生の評価が高めたかったら、簡単な内容のみを講義し皆に単位を出せば良いだけである。このままでは、大学の講義が講義ではなく”単位をあげるための儀式”程度しか意味がなくなってしまうように思う。鹿児島大のアンケートや共通教育改革にはこれらの視点が欠落しており、意味のあるものにはなっていないと感じる。FDや”改革”など世の中の流れと対外アピールとして行う必要は理解するが、極力影響のないように配慮して頂きたい。

3.備品等環境整備の要望

  • 成績ポイントが下がったが、去年は受講生が33人で小クラスだったが今年は55人に増えたせいかもしれない。
  • 受講制限をしなかったところ、例年100名前後であった受講生が、今年は200名を超えた。授業環境として好ましくないと思われ、試験や採点、成績の処理等で大変な負担が発生した。来年度にむけて受講制限をするか、講義を分担する教員と検討する予定である。
  • Moodleをうまく使えば、学生の要望にきめ細かく対応できるだろう。しかし、「バーチャルな」対話だけが進んで、討論、特に質問の仕方のスキルが上がらないのは問題である。人間関係の構築に資さない結果になってしまうのではと危惧する面もある。
  • Moodleでの回答を呼び掛けたが、受講者の2割程度しか回答していない。

4.情報提供の要望

  • 授業改善メモを作成する際には、以前に提出したメモ内容も参考にしながら、経年的な変化も評価して記載している。アンケート内容が変化する場合もあるかもしれないが、できれば、過去のデータ(今回分と、過去2年分)も参照できれば、ありがたい。
  • 一口に教養といっても、内容は理系科目から文系科目まで様々なので、大まかに分けられた結果があると、より自分の講義の改善に役立てられると思う。

5.その他

  • シラバスの英文表記や教員の英訳に対する不満も聞いているが、そういうことこそ、授業中での質問や要望の中で学生自身が解決する態度を身につけるべきではないかと考える。
  • 教員側からの学生評価についてFDで集約しているのだろうか? 学生側に学び方や学習態度の改善を求めるようなFDの取り組みがあるのだろうか?
 以上のように、授業改善に関するさまざまな意見が寄せられた。「1.学生アンケート・授業改善メモに関して」は、アンケートに肯定的な意見もあったが、一方で疑問視する意見も多く見受けられた。後者の意見は、学生の評価が高い授業が必ずしもよい講義ではない、学生自身の自己検証をさせる質問が必要、などの意見であった。「2. 組織的取組みによる教育改善の提案」には、教育改革自体に対する具体的な提案もなされており、今後の建設的な検討のきっかけになればよい。「3.備品等環境整備の要望」は、今回は設備に対する要望は見受けられなかった。この項目に含めるべきか難しい内容ではあるが、Moodle利用の問題点や受講人数に対する意見が寄せられた。「4.情報提供の要望」は、アンケート結果のフィードバックに関する意見がいくつかみられた。その他も含めて、学生による教員(授業)の評価だけではなく、学生自身の学習態度などの検証を行うべきという考えが少なからずあることもうかがえた。
掲載日:平成27年1月5日 編 集:学生部教務課教育推進係 鹿児島大学教育センター高等教育研究開発部会

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