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サトウキビ農業のIoT化によるスマート農業プロジェクトを開始

[19.03.11]

徳之島におけるサトウキビ農業のIoT化によるスマート農業プロジェクトを開始
-データ閲覧拠点として徳之島3町に「IoT先端農業実証ラボ」を整備 -
 
鹿児島大学産学・地域共創センターでは、文部科学省の平成30年度国立大学法人機能強化促進費事業で採択された「南九州・南西諸島域の地域課題に応える研究成果の展開とそれを活用した社会実装による地方創生推進事業」を推進しております。
本事業の主な取組みのひとつである、「南西諸島域の徳之島のサトウキビ産業の高度化に向けたプロジェクト」をこのほど開始しました。
本プロジェクトの概要等は以下のとおりです。
 
1.事業の概要 
 
産学・地域連携機能を強化し、学内の研究シーズ情報の一元化と学外機関等とのネットワークの拡充等を図ることにより、南九州・南西諸島域における地域課題の発掘・収集・集約を行うとともに、その中から研究テーマ化やプロジェクト構築を図る。
また、学内外に整備する「オープン実証ラボ(研究成果の発表・可視化スペース)」の推進による地域企業の研究開発支援を行い、さらには技術移転支援のほか、公的補助金の獲得やビジネスプランの策定支援等を通じた本学の研究成果の社会実装(事業化)への展開をめざす。
 
 
2.徳之島実証フィールドにおけるサトウキビ産業高度化プロジェクト
 
(1)背景
徳之島は、奄美群島で2番目の大きさで、奄美大島の3分の1の面積をもつ。一方、耕地面積は奄美群島中最大で6,890haを有し、総面積の約28%を農地が占める。一戸当たりの耕地面積は2.5haと全国平均値(1.8ha)と比較的して大きく、温暖な気候や広大な農地に恵まれ、サトウキビ、肉用牛、バレイショ、花き、果樹等を組み合わせた農業が営まれている。人口の約26%が農業従事者であり、農業は島の基幹産業となっている。その中でもサトウキビは、栽培面積約3,500ha、生産量約19万トン/年で島の基幹作物となっている。
現在、サトウキビの刈取り作業は機械化が進み、ハーベスターによる収穫率が97%を超えて効率的に行われるようになってきたが、農業就業人口に占める65歳以上就業者の比率が約60%と高齢化が進んでおり、若年層の島外流出という社会環境下にあって農家戸数は年々減少傾向にある。あわせて高齢などで離農した農家や島外へ転出した不在地主による農作業の外部委託や農地貸出は、管理不足を招き、単収の低下といった問題を引き起こしている。
 
(2)課題
  • 収穫量を予測したいが、人手不足等により全島的な正確なデータがつかめない。
  • 製糖工場生産管理のため、作付面積、作付状況の正確な把握が可能な衛星画像データの取得。
  • 単収増加のための糖度分布把握による刈取適地の判別。
  • 製糖工場の計画的な操業のための全島的な生育状況、収穫状況のリアルタイム把握。
  • 畑地灌漑水(畑地灌漑施設の整備率30%)利用促進のための効果の検証と啓発。
  • 台風後の散水の時期・量を明確にするためのキビ葉に付着した塩分濃度分布の把握。
 
(3)事業内容(2018年度)
2018年度は、徳之島3町のサトウキビ圃場に設置された気象観測用フィールドサーバー(図1)から収集された生育環境データ及びリモートセンシング(人工衛星画像解析)(図2)による生育状況データを収集し、全島的育成状況把握手法の開発の準備を行った。
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(図1)フィールドサーバー
 
 
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(図2)衛星画像(徳之島空港周辺)

 
 
また、得られた気象・衛星画像データを自由に閲覧できるように島内3町役場内に「IoT先端農業実証ラボ拠点」(IoTクラウドモニタ)を設置した。(以下、取組詳細)
 
①人工衛星画像解析(リモートセンシング):
農学部環境情報システム学研究室の神田英司准教授によって人工衛星画像の経時変化からサトウキビの生育状況の解析を開始。
 
②気象観測用フィールドサーバーの設置:
島内3町(徳之島町、天城町、伊仙町)のサトウキビ圃場に各1台設置した気象観測用フィールドサーバー(図1)を「IoT 先端農業実証ラボ」モニタリングポイントとし、気温、湿度、風向風速、日照、地温等に関する定時観測を開始すると共に定点カメラによるサトウキビの生育状況を把握。
 
③徳之島「IoT先端農業実証ラボ」の設置:
上記の2つの解析データはIoT クラウドデータとして統合し、町農政担当者およびサトウキビ生産関係者(生産者、製糖工場)が自由に閲覧できるように島内3町役場内に「IoT 先端農業実証ラボ拠点」と位置付けたパソコン(IoTクラウドモニタ)を設置。
 
(4)展望
これらのデータは各役場における農政政策全般(作付面積・生育状況の把握、畑地灌漑水の利用促進のための効果の検証)に活用されることが期待される。また製糖工場では、サトウキビの生育状況を把握し、収穫量の予測、単収増加のための糖度分布把握による刈取適地の判別をする他、刈取進捗管理による生産管理の精度向上、工場の効率・計画的な稼働のために利用されることを目指す。研究期間は2018年度から2021年度までの4年間とし、データの利活用に関する研修会等を開催する予定である。
 
【本件に関するお問い合わせ】
研究推進部社会連携課
TEL:099-285-3640