【病院】前立腺がんに対するPSMA標的治療(放射性薬剤を用いた治療)を開始
[記事掲載日:26.04.30]
2026年5月より、鹿児島大学病院では、前立腺がんに対するPSMA(前立腺特異膜抗原)標的治療を開始いたします。
本治療は、PSMAを標的とする放射性リガンド療法(RLT)であり、国内外で注目される先端がん治療の一つです。
PSMA標的治療とは
放射性同位体を含んだ薬剤が、前立腺がん細胞表面に多く発現するPSMAに結合し、がん細胞内部に取り込まれた後、ベータ線を放出して内側から腫瘍を攻撃する治療です。外部照射とは異なり、がん細胞に集中的に作用し、周囲の正常組織への影響を抑えることが期待されています。
臨床試験では、進行した前立腺がんの患者さんのうち、PSMA治療を実施した方の余命は、平均で15.3ヵ月であり、対照群と比べて4か月延長しました(改善率32%)。日本では2025年9月に承認され、PSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)が対象となります。
治療は通常6週間隔で最大6回の静脈投与で行われます。1回の入院は3泊4日です。治療中の病室は放射線管理区域に指定され、出入りや家族との面会はできません。
PSMA標的治療が適応となる患者さん
転移を有する前立腺がんの患者さんで、「去勢抵抗性」という少なくとも1剤のアンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)と呼ばれる種類の薬物治療を受けた後に薬が効かなくなった方が対象です。セラノスティクス(Theranostics)といって、診断(Diagnostics)と治療(Therapy)がセットになっており、治療の前にPSMA-PET検査を受けて検査が陽性と診断されることが必要です。
治療は入院が必要で入院中は放射線管理区域で過ごすために、日常生活が自立しており、排尿管理が自分でできることが条件です。また採血で逸脱した検査異常がないことも条件です。
鹿児島県内での意義
鹿児島県は高齢化率が高く、前立腺がんの罹患率も全国平均と比べて高いです。年間約1500人が前立腺がんと診断され、年間約200人が前立腺がんで亡くなっています。この治療の対象となる去勢抵抗性となった患者さんは年間約80人発生していると推測されます。
鹿児島大学病院は県がん診療連携拠点病院として、高度放射線管理体制、核医学診療の専門スタッフ、PSMA-PETを含む診断体制を整備し、治療開始に向けて準備を進めてまいりました。
九州でPSMA-PET検査ができる施設は九州大学病院、熊本大学病院、鹿児島大学病院の3か所のみです。南九州地域で検査と治療が同じ施設でできることは治療アクセス向上からも大きな前進です。
治療の特徴と期待される効果
国際的な臨床試験では、PSMA標的治療により以下が示されています。
- 生存期間の延長
- 痛みなど症状の改善
- 腫瘍マーカー(PSA)の低下
治療選択肢が限られた患者さんにとって重要な選択肢となっています。
副作用と安全管理
主な副作用として、倦怠感、口の渇き、吐き気、骨髄抑制(貧血・血小板減少など)が報告されています。特に骨転移が多い患者さんでは骨髄抑制に注意が必要であり、当院では放射線科・泌尿器科が連携し、厳密な血液検査・腎機能評価・副作用管理体制で臨みます。
患者さんへのメッセージ
PSMA標的治療は「誰でも受けられる治療」ではなく、PSMA-PETでの陽性確認や治療歴など、一定の条件を満たした患者さんに提供される高度専門治療です。 しかし、対象となる患者さんにとっては、これまでにない新たな希望となる治療です。
鹿児島大学病院は、地域のがん医療を支える中核病院として、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供し、南九州地域の医療向上に貢献してまいります。