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【博物館・農林水産】155年間キツネフエフキと誤認されていた種が有効種であることが判明

[記事掲載日:22.03.07]

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 農林水産学研究科の大学院生渋谷駿太氏を筆頭とする総合研究博物館の研究チームは、フエフキダイ科フエフキダイ属の一種Lethrinus longirostris(レスリナス・ロンギロストリス)を155年ぶりに有効な種であることを確認し、日本からも初めて記録しました。本種の大型個体が国内における主要な分布域である奄美大島において、信仰の対象とされている巨大な岩、「立神」を連想させることに因み、新標準和名タチガミフエフキを提唱しました。本研究の成果は査読付オンライン誌Ichthy, Natural History of Fishes of Japan(イクチィ)に2022年2月21日付けで掲載されました。

 Lethrinus longirostrisは1867年にタンザニアで採集された標本に基づき、新種として記載されました。しかし、その後150年以上にわたって本種はキツネフエフキLethrinus olivaceus(レスリナス・オリバセウス)と同種であると考えられてきました。Lethrinus olivaceusLethrinus longirostrisより早い1830年に記載されていたため、記載年が早いLethrinus olivaceusが有効となり、Lethrinus longirostrisは無効な学名として扱われてきました。

 本研究において、インド・太平洋広域から得られたタイプ標本を含む多くの標本を形態学的に調査し、遺伝子の解析や過去の文献調査をしたところ、頭部の色彩[タチガミフエフキでは赤色帯(斑)をもつが、キツネフエフキでは黄色みを帯びた橙色帯をもち赤色斑を欠く]と下枝鰓耙数(タチガミフエフキでは少なく、キツネフエフキでは多い)などから、L. longirostrisL. olivaceusが別種であることを確認しました。

 さらに、国内外におけるL. olivaceusに関する記録(標本、遺伝データ、文献に基づく)を調査することによって、タチガミフエフキL. longirostrisとキツネフエフキL. olivaceusはインド・太平洋の広域に分布することが明らかとなりました。なお、両種とも全長1メートルに達する大型種です。

 本研究で使用したフエフキダイ属魚類114標本は総合研究博物館に学術標本として所蔵されています。

【掲載論文】
フエフキダイ科Lethrinus olivaceus Valenciennes, 1830キツネフエフキの新参異名とされていたLethrinus longirostris Playfair, 1867タチガミフエフキ(新称)の有効性と再記載

【著者】
渋谷駿太・前川隆則・桜井 雄・本村浩之

【掲載誌】
Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 17: 50-66

【DOI】
10.34583/ichthy.17.0_50

【関連ページ】
 総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページはこちら

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タチガミフエフキ(奄美大島産:総合研究博物館所蔵)


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キツネフエフキ(奄美大島産:総合研究博物館所蔵)