トップページトピックス【総合研究博物館】保管中の標本から新種のヒメジを発見、「イワナガヒメジ」と命名

【総合研究博物館】保管中の標本から新種のヒメジを発見、「イワナガヒメジ」と命名

[記事掲載日:21.03.05]

 総合研究博物館とノルウェー海洋研究所の研究チームは、西太平洋に分布するヒメジ科ヒメジ属魚類の分類学的研究を実施し、ベトナムやインドネシアなどから3新種を発表しました。そのうちの1新種は、2012年1月20日に種子島の中種子町に設置された定置網で漁獲された個体(体長9 cm)で、総合研究博物館の魚類コレクションに保管されていた標本の中から見つかりました。本新種は細長い体型から、「細長い」を意味するラテン語に基づき、Upeneus elongatus(ウペネウス・エロンガタス)として記載され、新標準和名は「イワナガヒメジ」と命名。
 
 本新種はサクヤヒメジとよく似ていますが、鰓耙数が多いこと、体がより細長いこと、黄色斑が第1背鰭基部中央にあることなどから識別されます。標準和名のイワナガは古事記や日本書紀に登場する女神「いわながひめ」(漢字表記は石長比売あるいは磐長姫)に由来します。「いわながひめ」は近縁種のサクヤヒメジの語源となった「このはなさくやびめ」(木花之佐久夜毘売)の姉にあたります。木花之佐久夜毘売は初代天皇の曾祖母です。種子島産のイワナガヒメジは世界で唯一の標本ですが、フィリピンでは多くの水中写真が撮影されています。本種の主な生息地はフィリピン近海で、種子島の個体は黒潮によって運ばれてきたものと考えられます。
 
 イワナガヒメジは総合研究博物館が発見・記載した新種のヒメジ科魚類としては5種目となります。20万点におよぶ総合研究博物館の魚類コレクションの中には多くの未知の魚の標本が保管されていると思われ、標本を利活用した更なる研究が期待されます。
 
 なお、この研究の成果をまとめた論文は、国際誌Zootaxa(ズータクサ)で2021年3月1日に出版されました。
Uiblein, F. and H. Motomura. 2021. Three new goatfishes of the genus Upeneus from the eastern Indian Ocean and western Pacific, with an updated taxonomic account for U. itoui (Mullidae, japonicus-species group). Zootaxa, 4938 (3): 298-324.
 
 
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イワナガヒメジ Upeneus elongatus(鹿児島大学総合研究博物館所蔵)
 
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