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【医歯研】結核菌が免疫を回避する仕組みを解明

[記事掲載日:21.04.28]

 本学医歯学総合研究科免疫学分野の原教授と飯笹助教らの共同研究グループは、結核菌が免疫系による攻撃を逃れる新たな仕組みを発見しました。
 
【概要】

 本学免疫学分野の原教授と飯笹助教らの研究グループは、結核菌が免疫系による攻撃を逃れる新たな仕組みを発見しました。この研究成果は、2021年4月16日、英国のオンライン学術誌 『Nature Communications』に掲載されました。
 結核はエイズ、マラリアと並ぶ三大感染症の一つであり、世界人口の20%以上もの人が結核菌に感染し、年間150万人もの命が失われています。結核に有効なワクチンは未だ存在せず、近年では超多剤耐性菌の出現も問題となっています。結核菌やハンセン病の原因となるらい菌は抗酸菌と呼ばれる菌種に分類されます。抗酸菌は免疫系からの攻撃を逃れる巧みな仕組みを持っており、本来ならば細菌を取り込んで殺傷する役目をもつ免疫細胞であるマクロファージの中に棲息することができるため、一旦感染が成立すると、生涯に渡って感染が持続します。従って、結核やハンセン病に有効な治療法を開発し、その根絶を目指す上で抗酸菌の免疫回避の仕組みを解明する必要があります。
 抗酸菌の表面は特有の脂質によって形成された分厚い外膜で覆われており、この特殊な脂質が宿主の免疫系をコントロールして病原性に関わることが知られていました。原教授らのグループは、抗酸菌の外膜脂質の主成分であるミコール酸が、TREM2と呼ばれる免疫受容体によって認識されることを発見しました。TREM2はマクロファージ上に発現する受容体であり、ミコール酸を認識してTREM2が活性化するとマクロファージの殺菌力が低下し、マクロファージ内での菌の生存を許容する状態になることが判明しました。逆にTREM2を分子遺伝学的手法で欠損させたマウスでは、マクロファージの殺菌力が高まり、菌の排除が促進されました。すなわち、結核菌などの抗酸菌は、TREM2に作用することで免疫細胞の攻撃力を弱め、自身の生存と増殖に有利な環境を作り出すことが明らかとなりました(図)。
 今後このTREM2を介した免疫制御の仕組みがより詳細に明らかになれば、結核などの難治性の抗酸菌感染症の新たな治療法に結びつく可能性があると考えられます。
 
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< TREM2を介した結核菌の免疫回避機構 >

 

【論文情報】


<タイトル>
TREM2 is a receptor for non-glycosylated mycolic acids of mycobacteria that limits anti-mycobacterial macrophage activation
<著者名>
Iizasa Ea, Chuma Yb, Uematsu Tc, Kubota Md, Kawaguchi Ha, Umemura Me, Toyonaga Kf, Kiyohara Hb, Yano Ig, Colonna Mh, Sugita Mi, Matsuzaki Ge, Yamasaki Sf, Yoshida Hd and Hara Ha,#

a鹿児島大学医歯学総合研究科、b日本BCG研究所、c北里研究所メディカルセンター、d佐賀大学医学部、e琉球大学熱帯生物圏研究センター、f大阪大学微生物病研究所、g大阪市立大学医学部、hワシントン大学BJC Institute of Health、i京都大学ウイルス再生医科学研究所、#責任著者

<雑誌>
Nature Communications. 12, Article number: 2299 (2021) 
<DOI>
https://doi.org/10.1038/s41467-021-22620-3