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【博物館】日本初!ニホンイトヨリを確認

[記事掲載日:21.05.11]

 総合研究博物館とかごしま水族館の研究チームは、種子島で採集されたイトヨリダイ科魚類をニホンイトヨリと同定、日本初の確実な記録として、日本魚類学会発行の魚類学雑誌に報告しました。
 
 ニホンイトヨリNemipterus japonicusは学名の種小名が日本を意味する「japonicus」、標準和名にもニホンが含まれますが、これまで日本国内からの確かな分布記録は知られていませんでした。
 Nemipterus japonicusは1791年にドイツの魚類学者によって、日本産と誤認された標本に基づき新種として記載されました。200年以上前のヨーロッパの人々にとって日本は遠く離れた未知の場所であり、日本を含むアジア一帯の認識は曖昧であったようです。なお、後の研究によりこの標本の産地は日本ではないことが明らかになり、現在ではインドネシアのジャワ島周辺で採集された標本である可能性が高いと考えられています。
 また、日中戦争の最中である1938年に日本の魚類学者によりNemipterus japonicusに対してニホンイトヨリという和名が付けられましたが、この時も日本における分布の根拠は示されませんでした。
 ニホンイトヨリは台湾や東南アジア各地では重要な水産資源となっており、個体数も多いものの、これまで国内で採集された確かな記録はありませんでした。
 本研究で報告された標本は、種子島在住の美座忠一さんにより総合研究博物館に寄贈されたものです。種子島産の個体は仔稚魚期に台湾周辺海域から黒潮によって偶発的に輸送されてきて、種子島周辺に定着し、成長した可能性が高いと考えられます。
 
論文:中村潤平・本村浩之.2021.ニホンイトヨリNemipterus japonicusの日本からの初めての確かな記録.魚類学雑誌,doi: 10.11369/jji.21-001 (5 pp.)
 
 
 
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種子島産ニホンイトヨリNemipterus japonicus(鹿児島大学総合研究博物館所蔵標本)
 
 
 

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