【水産学部】大胆すぎるゼブラフィッシュ?!
[記事掲載日:21.07.05]
本学水産学部食品生命科学分野塩崎一弘准教授と大学院連合農学研究科博士課程の池田麻美さんらは、脊椎動物の興味や好奇心・大胆さの制御因子として、Neu1タンパク質が重要な役割を果たすことを新発見しました。
【概要】
糖鎖分解酵素Neu1の遺伝子を破壊したゼブラフィッシュ(KOゼブラフィッシュ)を作出し、その情動行動について解析しました。その結果、KOゼブラフィッシュは不安な環境でも他の個体と離れて行動すること、初対面のゼブラフィッシュや知らない他魚種に対して好奇心旺盛で接近行動を繰り返すことが分かりました。また、通常のゼブラフィッシュは本能的に白色を忌避しますが、KOゼブラフィッシュは逆に白色への興味が亢進するなど、大胆な遊泳行動を取ることがわかりました。遺伝子解析の結果、KOゼブラフィッシュの脳では、不安を感じるストレス内分泌系の働きが低下しており、さらにスフィンゴ糖脂質の組成変化やリソソームエキソサイトーシスの増加が認められました。本研究成果は、Scientific Reportsオンライン版にて6月29日に公開されました。
【研究のポイント】
- 本研究では、ヒトを含む脊椎動物に共通して存在するNeu1タンパク質が、ゼブラフィッシュの興味や好奇心、大胆さに関与することを発見しました。
- Neu1タンパク質が機能しないゼブラフィッシュは、異種の魚にも危険を顧みず接近行動を繰り返すこと、さらに通常のゼブラフィッシュが本能的に忌避反応を示す白色水槽に積極的に侵入するなど、大胆な行動を見せることが分かりました。
- 遺伝子解析の結果から、このゼブラフィッシュは周囲の危険に対して不安を感じないため、このような大胆な行動を取っていることが明らかとなりました。
- 本研究の成果は、脊椎動物の興味探索行動の制御メカニズムの解明や、衝動的な行動を伴うヒトの情動障害の研究などへの応用が期待できます。
【論文情報】
<タイトル>
Neu1 deficiency induces abnormal emotional behavior in zebrafish.(Neu1欠損ゼブラフィッシュは情動行動の異常を表す)
<著者名>
池田麻美1、駒水麻由2、林 章人2、山崎千春2、岡田圭司2、河辺ももこ1、小松正治1,2、塩崎一弘1,2
1: 鹿児島大学大学院 連合農学研究科 応用生命科学専攻
2: 鹿児島大学 水産学部 食品生命科学分野
<雑誌>
水産学部塩崎一弘研究室HPはこちら