トップページトピックス【水産】分布南限である屋久島におけるアユの現在の生息状況と 遺伝的・生態学的特異性が明らかに!

【水産】分布南限である屋久島におけるアユの現在の生息状況と 遺伝的・生態学的特異性が明らかに!

[記事掲載日:22.06.07]

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 水産学部久米研究室では、山口大学との共同研究により、分布南限である屋久島におけるアユの現在の生息状況とその遺伝的及び生態学的特異性について明らかにしました。この研究成果は、2022年11月に学術雑誌(魚類学雑誌)に掲載される予定です。

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概要

 アユは日本列島からベトナムにかけて広く分布し、日本の内水面漁業において極めて重要な魚種であります。屋久島には、本種の分布の南限に位置する島嶼個体群がみられ、鹿児島県により消滅危惧Ⅱ類に指定されております。これまで本種の遺伝的及び生態学的特性についてはよく分かっていませんでした。これまでに永田川、一湊川、宮之浦川、安房川、栗生川の5河川で生息が確認されていましたが、本研究において目視及び環境DNAによる調査を実施した結果、安房川では個体群が消失している可能性が極めて高いこと、永田川と一湊川では個体群は存続しているが、その生息密度は極めて低いことが明らかとなりました。屋久島のアユは、本土のものとは遺伝的に異なること、また、島内の河川ごとに遺伝的に異なる個体群が存在していることが分かっています。河川内の個体群の遺伝的多様性は極めて低く、これは各個体群がそれぞれの河川環境に適応して生活していることを示している一方、環境変化に極めて脆弱であることを意味しております。産卵期、仔稚魚期の食性、遡上生態等の生活史特性には、本土のアユ、及び同じ南方個体群であるリュウキュウアユとの間に多くの相違点が確認されました。温暖化の進行は、屋久島のアユ集団の存続に致命的な影響を及ぼす可能性を示唆しております。今後、この遺伝子的に貴重な屋久島のアユ集団について、河川ごとの個体群単位で適正に保全、管理していく必要があります。

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宮之浦川のアユ

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栗生川のアユ


論文情報 

<タイトル>
分布南限である屋久島におけるアユの現在の生息状況と初期生活史

<著者名>
平野荘太郎, 中尾遼平, 赤松良久, 岡紗也佳, 関口一平, 久米元

<雑誌>
魚類学雑誌69巻2号(2022年11月掲載予定)

<DOI>
doi.org/10.11369/jji.22-002