トップページトピックス【博物館】インド・西太平洋に広く分布するベラ科魚類の新種を発見、国内では屋久島以南に分布

【博物館】インド・西太平洋に広く分布するベラ科魚類の新種を発見、国内では屋久島以南に分布

[記事掲載日:22.06.07]

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 総合研究博物館の研究チームは、ベラ科オハグロベラ属の分類学的再検討の過程で、これまでインド・西太平洋に広く分布すると考えられていたPteragogus cryptus(プテラゴガス クリプタス)が紅海の固有種であり、東インド洋や西太平洋に生息する個体群は新種であることを突き止めました。本新種は頭部の白線模様が鳥類のツグミTurdus eunomusに似ていることから、Pteragogus turdus(プテラゴガス ツアダス)(=ツグミのようなオハグロベラの意)と命名されました。また、昨年同チームにより命名されたキツネオハグロベラによく似ており、国内でも同所的に生息することから、本新種には新標準和名としてタヌキオハグロベラを提唱しました。本研究の成果は、日本魚類学会が発行する英文誌「Ichthyological Research」(イクチオロジカル リサーチ)に2022年5月30日付けで掲載されました。

 タヌキオハグロベラ65標本(標準体長1.8~8.1センチ)に基づき形態学的に比較検討したところ、本新種は背鰭棘数が10、鰓耙数が10~15、腹鰭長が標準体長の16.5~24.3%、雄の背鰭第1~3棘あるいは第1~2棘に付随する鰭膜が伸長する、前鼻孔に暗色の縁取りがある、生鮮時に3青灰色線が眼下域にある、生時に吻端から眼上縁を通って主鰓蓋骨上縁にかけて伸びる白線がある、主鰓蓋骨上に眼状斑がある、体側中央に複数の小暗色斑が縦列する、腹部に黒色斑がないことなどから同属他種と識別されることが分かりました。

 タヌキオハグロベラは、国内では屋久島、沖縄島、伊江島、宮古島、石垣島、西表島における生息が確認されました。

20220607bera01.jpgタヌキオハグロベラPteragogus turdusのホロタイプ(体長7 cm)

20220607bera02.jpgタヌキオハグロベラの水中写真 石垣島(西山 一彦氏撮影)





【掲載論文】
Pteragogus turdus, a new species of wrasse (Perciformes: Labridae) from the Indo-West Pacific Ocean
【著者】
Tomoka Iino and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】
Ichthyological Research
【DOI】
10.1007/s10228-022-00875-0

【関連ページ】
 総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページ