トップページトピックス【農学部】天然ニンニクの機能性を解明!生活習慣病予防への応用に期待

【農学部】天然ニンニクの機能性を解明!生活習慣病予防への応用に期待

[記事掲載日:22.06.03]

  • topics-SDGs-03(すべての人に健康と福祉を)

 大学院連合農学研究科、農学部食品分子機能学研究室の侯 徳興教授の研究グループは、株式会社健康家族との共同研究により、特殊な方法で加工した天然ニンニクが、無臭になることに加え、善玉腸内細菌バクテロイデス・アシディファシエンス(Bacteroides acidifaciens)を増加させることを発見しました。2022年5月18日には国際学術誌 「Journal of Agriculture and Food Chemistry」に研究成果を掲載、トッピクスとして同誌の表紙に選ばれました。
 バクテロイデス・アシディファシエンスの増加は、過剰栄養で誘発された脂質・糖質の代謝障害を防ぐことに繋がります。天然ニンニクは新しいタイプの機能性成分として、生活習慣病の予防に応用されることが期待されます。

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「Journal of Agriculture and Food Chemistry」表紙


【研究概要】

 ニンニクは古代文明の時代から栽培されており、その薬理作用が医療をはじめとする多く の場面で活用されてきました。近代では、膨大な疫学調査の結果、ニンニクはがんの予防に最も有効なデザイナーフーズとして位置づけられています。
 これら生理活性の多くは、ニンニクの含硫有機化合物によるものと考えられています。ニンニクの含硫有機化合物は細胞質に存在しており無臭ですが、加工・調理時には細胞維管束中の酵素・アリイナーゼにより有臭のアリシンに変わります。アリシンは不安定であり、速やかにニンニクの臭いの要因となるアリルスルフィド類、ビニルジチン類、 アホエン類等々に変化します。この不安定成分による臭いが、ニンニクの機能性評価や食品加工の難題となっています。
 
 本研究では、この問題を克服するため、特殊な加工方法でニンニク細胞中のアリイナーゼ酵素を失活させ、無臭の含硫有機化合物を分解することがないようニンニクを調整しました。さらに、このように調整したニンニクを使用し、ニンニクの生活習慣病の予防機能を調べたところ、過剰栄養による腸内細菌叢失調及び脂質代謝異常のマウスモデルにおいて、顕著な腸内細菌叢の改善効果および脂質・糖質代謝の改善効果が認められました。例えば、過剰栄養がもたらした体重、脂肪重量、肝臓脂肪率、血中総コレストロール、血清中性脂肪、血清低密度リポタンパク質、肝臓脂肪率、血糖値やインスリン抵抗性等の生活習慣病指標を低下させる結果がでました。
 この作用機構を解析した結果、ニンニクの含硫有機化合物がタウリンを増加させ、肝臓の脂肪酸β酸化も促進することにより、脂質異常症と脂肪肝を抑制、同時に高血糖に係る酵素ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)と肝臓の糖新生を阻害することにより、グルコース恒常性(血糖値を健康的な状態に調節すること)を維持していることが分かりました。

 また、腸内細菌の体外培養実験では、ニンニクの含硫有機化合物が腸共生細菌であるバクテロイデス・アシディファシエンスの増殖を直接促進させることが分かりました。バクテロイデス・アシディファシエンスの作用は基礎研究の結果で、脂質・糖質の代謝異常を改善する効果が分かっているため、未分解のニンニク含硫有機化合物は、過剰栄養により誘発される脂質・糖質の代謝障害を改善することが明らかになったと言えます。


 これらの研究成果から、含硫有機化合物が分解されていない天然ニニンニクは無臭で、さらにバクテロイデス・アシディファシエンスを増加させ過剰栄養により誘発される生活習慣病を予防する、新しいタイプの機能性成分として応用できると考えられます。


【タイトル】
Natural Garlic Organosulfur Compounds Prevent Metabolic Disorder of Lipid and Glucose by Increasing Gut Commensal Bacteroides acidifaciens
【著者名】
Keyu Chen, Yasushi Nakasone, Shuhan Yi, Hisham R. Ibrahim, Kozue Sakao, Md Amzad Hossain, and De-Xing Hou*(責任著者)
【雑誌】
Journal of Agriculture and. Food Chemistry. 2022, 70, 5829−583.
【DOI】
10.1021/acs.jafc.2c00555