トップページトピックス【農学部】植物糖タンパク質に残された最後の糖を切断する酵素をビフィズス菌から発見

【農学部】植物糖タンパク質に残された最後の糖を切断する酵素をビフィズス菌から発見

[記事掲載日:23.01.19]

  • topics-SDGs-03(すべての人に健康と福祉を)
  • topics-SDGs-09(産業と技術革新の基盤を作ろう)

 農学部食料生命科学科応用糖質化学研究室の藤田 清貴准教授らの研究グループは、理化学研究所の石渡 明弘専任研究員らのグループと共同研究を行い、ヒト腸内環境で生育する主要なビフィズス菌であるBifidobacterium longumから、β-アラビノオリゴ糖鎖の分解過程で残されたL-アラビノース(L-Ara)を切断する最後の酵素β-L-アラビノフラノシダーゼ(Bll4HypBA1)を発見しました。β-アラビノオリゴ糖鎖はエクステンシンやポテトレクチンなどの植物タンパク質を構成するハイドロキシプロリン(Hyp)結合型糖タンパク質糖鎖であり、L-アラビノースで構成されています。これまでに、藤田准教授らは、4糖のL-Araで構成されたAra4-Hypが数種の酵素の働きでAra-Hypに分解され、切り出された3残基のL-Araがビフィズス菌によって分解代謝されるメカニズムを明らかにしてきましたが、Ara-Hypとして最後に一分子だけ残されたL-Ara がどのように利用されるかは分かっていませんでした。本研究により、糖質加水分解酵素ファミリーGH146に属するβ-L-アラビノフラノシダーゼ(Bll4HypBA1)は、ポテトレクチンや合成エクステンシンモチーフに残されたL-Araを完全に分解できることが明らかになりました。

 植物糖タンパク質糖鎖の役割を明らかにするためには、糖鎖を完全に除去できる簡単な方法が不可欠です。ビフィズス菌が持つ本酵素などの数種の分解酵素と組み合わせることで、タンパク質を変性させることなく完全に糖鎖を除去できます。本酵素はヒトの腸内に生息するビフィズス菌から得られたことから、ヒト腸内環境においてビフィズス菌が野菜や穀物などに含まれる植物糖タンパク質に含まれる糖を余すとこなく全て利用する仕組みが明らかになりました。本研究はβ-アラビノオリゴ糖鎖のビフィズス菌における分解代謝メカニズム解析において残されていた最後のL-Araの分解の仕組みを初めて明らかにしたものであり、植物糖タンパク質糖鎖研究に不可欠な酵素剤としての利用も期待できます。この研究成果は、Chemistry Europeの科学雑誌「ChemBioChem」に掲載されました。

20230119kouso01.jpg


【掲載誌】
ChemBioChem

【タイトル】
Bifidobacterial GH146 β-L-arabinofuranosidase (Bll4HypBA1) as the last enzyme for the complete removal of oligoarabinofuranosides from hydroxyproline-rich glycoproteins.

【著者】Akihiro Ishiwata a,#, Hanako Tsunomachi b, Kyohei Kameyama b, Kaeothip Sophon a, Masayuki Nakamura b, Kanefumi Kitahara b, Katsunori Tanaka a,c, Yukishige Ito a,d, Kiyotaka Fujita b,#
a理化学研究所,b鹿児島大学農学部,c東京工業大学理工学研究科,d大阪大学理学研究科,#責任著者

【公開日】2022年12月28日(現地時間)

【DOI】10.1002/cbic.202200637